ソリッドステートドライブ(SSD)活用には
SSDは読み書き速度がHDDと比較して高速なのが特徴。また壊れにくいメリットがあげられます。機械的に動作する部分が少なく、振動や衝撃にも強いのです。そうは言ってももちろん故障は起こることが前提で考えるべき。長く安全に利用するにはどういったことに気を付けるべきなのでしょうか。
今回はこの話題を取り上げ解説します。
※ご興味のある方は参考までに「HDD」についても昨年八月の過去記事へのテキストリンクをクリックしてご参照いただけます。
『HDD(ハードディスクドライブ)製品モデル別の耐久性』
事前の備え
SSDを購入してPCやサーバに接続した後、最初にするべきことは「バックアップ」。データをコピーして少なくとも三箇所にバックアップ保存します。元データ(オリジナル)、元データのローカルバックアップ、元データのリモートバックアップの三パターンは最低限必要です。また全てを同じ種類のメディアや記録装置に保存せず、2種類以上の異なる装置を用いること。
異なる装置を複数使えば、たとえ1つの装置やメディアに障害が発生しても別のメディアからデータを復旧できます。またうち1つはリモートに保存すること。自然災害や盗難などのリスクからデータを守るにはこれらの措置は必須です。
やるべきこと
- データバックアップ拠点(装置)を複数用意
- バックアップは自社から離れた場所にも設置
- 災害や偶発的事故による削除が発生した場合にも復旧できるよう、1つ以上のバックアップにアクセスできる準備
解説
SSDは現在のところ、ほぼ全てのタイプでNAND型フラッシュメモリが使用されており、NANDは「NOT AND」と呼ばれる論理ゲートに由来した命名。
おおよそ3種の半導体部品から構成され、データを実際に長期保存する「NAND Flash Memory」、データアクセスを高速化する「Cashe」、どの位置にデータを書き込むのかを制御する「Controller」がその主要部。Flashは電源を切ってもデータを保持する不揮発性の半導体メモリのことなのです。
ただし、その特性としてフラッシュタイプのメモリセルは仕様上決まった回数のみ書き込んだり消去したりが制限されています。
製品化が始まった当初SSDは1つのメモリセルに1bitのデータしか保存できないSLC(シングルレベルセル)と呼ばれる技術仕様のみでしたが、現在はSLC以外にも4つのNANDフラッシュセル技術が利用され、セル当たりの保存bit数が増加した場合にはbit当たりのコストは下がるものの耐久性と性能が低下する傾向が見られます。一般的にSLCとMLC(マルチレベルセル)は高速で長持ちですが、容量に制限があります。
TLC(トリプルレベルセル)とQLC(クアッドレベルセル)は低コストですが速度が遅い傾向です。3DNANDは最新技術ですが、コストが高いのが難点です。
信頼性の高さは
HDDと比較すればSSDは頑丈なのがメリットの一つ。回転や往復する可動部品がなく、落下やその他の衝撃、振動、極端な温度や磁場の劇的変化といった負荷の高い環境に耐えられるつくりです。ミニサイズかつ消費電力が低いため、HDDをSSDに置き換えるだけの価値が高いのも事実。デスクトップPCやデータセンター向けなど用途によってその導入が左右される傾向にあります。
幅広い用途に対して性能や信頼性の要求基準はそれによって、書き込み集中型、読み取り集中型、混載型などの作業負荷ごとに分けられます。
トランザクションの多いデータベースを使用するユーザーは容量ではなく、書き込み回数に耐えうるSSDを選び、頻繁に書き込みをしないデータベースを使用するユーザーは大容量かつ低性能なものを選ぶ傾向が強いと言えます。メモリセル構造やキャッシング技術などを組み合わせて製品化され、業務に最適なタイプを幅広い選択肢から選べるのもSSDの持つ強みです。
故障の際には
HDDの故障時は、前兆として「カチカチッ」という聞き慣れない異音が発生したり、通常は聞こえる回転音がしなかったりと言った傾向にあります。
SSDに関しては可動部品がなく、音では判断できませんが、故障と見られる兆候が多数報告されています。下記のケースではなるべく早めに新しいものへと交換されることをおすすめします。
発生しがちなエラーや障害 | |
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不良セクター | HDDと同様、SSDにも不良セクタが発生。増えるとファイル読み取りや保存に異常に時間がかかり続け最終的に失敗。OSやアプリケーション起動時にエラーが表示 |
ファイル読み書き不良 | SSDへのデータ書き込み中にシステムが不良セクタを検出、データの書き込みを拒否。もしくはデータ書き込み後にシステムが不良セクタを検出、データ読み込みを拒否 |
ファイルシステム障害 | エラーメッセージが表示されたケースではPCが適切にシャットダウンされておらず、本体に不良セクタなどの問題が発生している兆候が見られた |
起動中のクラッシュ | 問題が生じるケースでは起動中に何度もクラッシュが起きるなどの事象が発生 |
書き込み不可 | SSDの経年劣化に起因すると見られるケース |
SSDの傾向
寿命 | 用いられるメモリセル技術により千差万別。技術的に適合しない使い方をすれば、メーカー保証の寿命(一般的には5年)に及ばないケースが多い |
故障発生率(HDDとの比較) | SSDとHDDのブートドライブを、同種システムとストレージサーバ上で比較、導入から3年は各ドライブの故障率はさほど変わらず、4年目以降にHDDの故障率が高くなる傾向が見られた |
長期保存時の優位性(HDDとの比較) | 読み出しより書き込みが多い特殊用途における使用でなければ、信頼に足る品質を選ぶことで保存可能な期間が延びる傾向にある |
コストパフォーマンス(HDDとの比較) | 読み書き速度や耐久性などを含め多面的に考慮すべきだが、用途や目的によって大きく変わり、速度・耐久性等を重視しないケースではむしろHDDの優位性が高まる |