クラウドサービス活用の要件とは

ほとんどのクラウドサービス・アプリ利用は、ネットワークが生命線。世界中の至るところから接続してアクセスするためクラウドコンピューティングは生まれたと言っても過言ではなく、サービス活用には、考慮すべきポイントとしてネットワークの「帯域幅」「レイテンシ」「強靭性」に関する課題が生じやすく、解決すべき重要な要素となっているのです。今回はこの話題を解説します。

課題と解決策は

たとえば業務で頻繁に利用する「ウェブ会議アプリ」、音声が聞き取りづらくなったり、画像が途切れたり、接続が不安定になったりと障害や不具合の発生に悩まされた経験のある方は少なくありません。また閲覧しているサイトや起動中のアプリがクラッシュしたり、遅延や混線で見づらくなったりと膨大なデータをリアルタイムでネットワーク処理できる能力の不足や欠乏に対する解決方法は一朝一夕には見つからないのは当然のことです。

こうした問題はアプリ自体や端末スペックへの依存だったり、回線速度やネットワーク機器などのITインフラに関連したりと最適解を見つけるのが難しく、ユーザーニーズに応じた適切なリソースを割り当てる仕組みを組み立てられるかが問われます。

解決策の一つが「コンテンツデリバリーネットワーク」(CDN)の利用。こうしたサービスでは、CDNベンダーが各地に分散させたサーバ間をネットワーク化、専用プライベート回線を用いて接続させ、データやコンテンツの移動距離を短縮してレイテンシを低減、複数サーバへの地理的な負荷分散によるオリジンサーバへの負荷の軽減効果も高いことが判明しています。これにより帯域幅とレイテンシ要件を最適化、クラウドサービスをより効率的に利用できるメリットが生じるのです。
システム・アプリの応答時間を短縮、ネットワークの切断や遅延など不安定要素を減少させ作業効率は格段に向上します。サービスへの信頼性(障害や不具合の発生しにくさ)も高まり、障害発生の頻度も減少できればコスト削減につながり易いのです。

他にも、ネットワーク機器等の更新も効果の高い有効策と言えます。最新Wi-Fi規格への対応ルーターや端末へ切り替えることでアプリ利用時の帯域幅とレイテンシを大きく改善させる可能性が高まります。

予期せぬトラブルや障害発生にも強いネットワーク構築の重要性

誤った設定から予期せぬネットワーク機器等の欠陥や破損、急な大雨落雷と言った天候不順などネットワークトラブルを引き起こす条件には枚挙に暇がありません。そうした悪条件下であってもレジリエンス(障害発生からの回復力)と冗長性を確保できなければ弱肉強食のビジネスの世界で生き残るのは難しいのが現実。

万が一、ネットワーク構成条件の変更や機能停止が起きても、継続して接続、アクセスできるかが事業継続計画における肝。障害や大規模災害発生に備えたネットワーク復元・復旧計画を策定、データバックアップ、災害復旧(DR)テスト、インシデント対応など万全を期した対策を盛り込む必要があります。

今やクラウドベンダーからもそうした緊急時に備えたツールやサービスが提供されており、たとえば「Amazon Web Services」(AWS)では「Elastic Load Balancing」(ロードバランサー機能)や「Amazon Route 53」(DNS(ドメインネームシステム)機能)を利用できます。

冗長化の観点からは複数拠点間におけるデータ複製やバックアップを実施することでより確実にデータの安全性を確保。フォールトトレラント(無停止型)マシンを用いたサービス中断の回避策の実施など復旧が順次進められるような対策を打ち出すことが必要になってくるのです。

用語解説

「ネットワーク帯域」とは、通信時の電波や光と言った周波数の範囲(周波数の最高値と最低値の差)のこと。言わば「データが往来する道の広さ」を示す指標と言え、道路の道幅と同じように「広い・狭い」があります。帯域が広ければ広いほど一度に送信できる情報量が多くなり、速度は速まります。狭ければ狭いほど一度に送信可能な情報量が少なくなり、遅延するのです。

次に「ネットワーク帯域幅」とは、単位時間あたりの送信可能なデータの最大容量を指しており、「帯域」と「帯域幅」に明確な違いはなく、同じ意味で使うエンジニアもいます。帯域幅は1秒間に送信できる転送量を示す単位bps(ビット/秒)の値が高いほど回線速度も速いと言えます。

最後に「レイテンシ(latency)」は、ユーザーアクション後の応答までに要する時間のことを指しています。ネットワーク内やインターネット上で発生した遅延もそれに当たるのです。たとえばユーザーが何らかのアクションを実行後にサイト・アプリからアクションへの応答が返される時間もレイテンシです。

一例をあげるとウェブページリンクをクリック、ブラウザがその数百ミリ秒後にウェブページを表示した場合、ユーザークリックとブラウザー応答の間に遅延(レイテンシ)が生じることなのです。

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