Wi-Fi7ルーターの最適な導入時期
昨年末にieee802.11be(Wi-Fi7)規格が総務省から正式認可され、国内メーカーからも対応モデルが先日発売されました。海外メーカーは対応製品を昨年発売しており、アマゾン等で購入も可能です。
現状の6/6Eとの違いを踏まえて導入に向け最適なタイミングを検討すべき時です。今回はこの話題を取り上げ解説します。
最新規格の特徴
規格名を表すieee802.11(xx)とは、そもそも米国Wi-Fi Alliance協会が独自に定めた互換性を示す認証プログラムのこと。発表されたIEEE802.11be規格は最大46Gbpsによる通信速度の実現が可能な無線LANの規格方式を指しています。規格上のフルスペック通信では16ストリーム(16本のアンテナ)が必要ですが、4ストリームを用いた11.5Gpbsが一般的になるものと予想されます。
従来6/6Eでは製品レベルで最大4.8Gbps(4ストリーム)ほどだったのですが、最新規格では最大で2.4倍(6GHz帯利用時)ほどの速度向上が見込める優秀さ。
通信効率が格段にアップ
高速化要因のうち一つ目「4096QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)」方式導入により以前の10bitから最大12bitでのデータをやり取りが可能。これは従来「6/6E」規格においては搬送波あたり1024QAMで最大10bitのデータしかやり取り出来なかったものから1.2倍の進化を遂げています。1ストリームあたりで換算すると1,201Mbpsからプラス240の『1,441Mbps』への高速化。
二つ目の「320MHz幅」は、例えればデータ搬送の際に利用できる電波の帯域幅が2倍になったことを意味します。つまり一つ目と二つ目を合算して1ストリームあたり、(1,201Mbps+240)×2で『2,882Mbps』の速度が理論上可能となる計算。ただし320MHz幅は6GHz帯のみ許可されており、「5GHz帯」利用の際は理論上1,441Mbpsのみにとどまります。
複数周波数帯のおまとめ機能
これは「MLO(Multi Link Operation)」と呼ばれ、複数の周波数帯を束ねて利用する技術。すべての帯域を束ねて高速化できる高いメリットが見込まれます。この方式を用いれば、ルーターを複数台利用したメッシュ環境やルーターと中継器という複雑な構成においても高い信頼性を保ちつつ、安定的で遅延や切断の少ない通信環境を実現できるのです。
クライアントデバイスの対応時期
現時点(2月初め)において「Wi-Fi7」に対応している「PC・スマホ・タブレット」等の端末は日本で登場しておりません。
Core Ultra搭載PCやGoogle Pixelの一部最新機種のみ『7』対応として海外では販売されていますが、対応するIntel Wi-Fi7 BE200/202モジュールも現状のドライバでは320MHz幅へ接続できておらず、モジュール自体の流通量もごくわずか。
現時点でおすすめできるのは
これまで切れやすかったり、遅延や混線に悩まされてきた方にはMLO技術を用いた超高速なWi-Fi環境が実現され、メリットが高いものと考えられます。また『7』に対応したデバイスをすでにお持ちの方は格段に高速化したネット環境を実感できるチャンス。
期待できる多くのメリット
そうは言っても「7」に単独対応した端末機器はほとんどなく、来年以降に発売される対応機器が出るまで導入を見送るべきではと考えられる方が多いものと思われます。
ところが、早期導入『メリット』として押さえておきたいのが「7」対応ルーターに変えたとしても現在所持している機種はそのまま使え、通信の安定性や処理能力はがぜん増すところ。AIやIotからAR/VR/MRと言った最新技術を業務に取り入れたい方にはうってつけと言っても過言ではありません。また省電力性能についても高いパフォーマンスを発揮します。
たとえば端末の同時接続数を格段に増やすことができ、以前は同時接続数が増えると必ずと言っていいほど発生していた通信速度の遅延や切れやすさなど不安定さの改善につながりやすいのです。また以前であれば業務・店舗の統廃合や拡大・縮小に応じて、その都度有線LAN設備を増設・改築しなければなりませんでしたが、そうした課題にもフロアのレイアウト変更や配線工事を考慮する必要がなくなるのはメリットとして十分すぎるのではないでしょうか。
対応デバイスの買い替えを先行して実施する必要はなく、導入に向けお早目にご検討されることをおすすめします。