屋外利用に最適な無線LAN規格は

徐々に進みつつあるWi-Fi「5」(IEEE 802.11ac)や「6」(IEEE 802.11ax)規格からの移行ですが、『6E・7』など最新テクノロジーではなく、あえてIoT(モノのインターネット)向けに標準化された無線LAN規格を利用する動きもあります、この規格の特性や能力に応じた使い方を取り上げて解説します。

受信範囲を拡大でき消費電力も低い

規格名ですが、通称「Wi-Fi HaLow」と呼ばれ、正式名称ではIEEE 802.11ah。
特徴的なのが、「5・6」規格では利用する周波数帯が2.4GHz帯または5GHz帯であるのに対して、この規格では1GHz未満の周波数帯(日本では920MHz帯)を使用します。この周波数帯を利用するメリットは受信範囲の拡大と消費電力の削減が容易であること。

センサーやウェアラブルデバイス用のアプリケーションの電力消費を抑える仕組みが組み込まれ、信号到達距離や電波が障害物を透過する特性なども兼ね備えており、屋外での利用に最適との評価が高いのです。

事例研究

ユースケースにて検証されたその能力を見てみると、たとえば広い敷地内(約1万2000平方メートル程度)ではリピーター(中継器)を追加せず、1台の無線LANアクセスポイント(AP)のみで敷地全体をWi-Fiの受信域としてカバー、複数台のセキュリティカメラや防犯用センサーなど全部で十数台のセンサーが同時に稼働していても通信に必要な帯域幅を確保出来る能力を備えています。

また電波性能では建物や温室などガラスや金属の構造物を透過でき、屋内および屋外環境においても数百メートルの範囲内にWi-Fiの受信域を広げられ、APから最も離れたデバイスでも1.3Mbps、AP付近であれば20~24Mbps程度のデータ伝送スピードが報告されています。

広がる用途

これまで見てきた様に長距離に耐えうる高いデータ伝送能力、低い消費電力、構造物を透過できる電波性能は使い勝手に優れ、『6E・7』など最新規格と比べても活用シーンは豊富なことが予見できます。そこで想定できるユースケースを表にまとめてみました。

ユースケース一覧
モデルケース用途
住居向けセキュリティカメラ、空調、家電、ガレージ、太陽光発電、自家用発電設備、EV充電器
都市整備インフラ監視、スマートユーティリティー(電気・ガス・水道等のIoT機器)、交通管理
ビル管理防犯・監視設備、入退室管理、警報機、漏水・漏電検知のビル向けIoTアプリケーション
小売等リテールスキャナー、リーダー、POS(販売時点管理)、荷物追跡、セキュリティ監視、倉庫ロボット、搬送用具
産業用IoT製品や装置の追跡、インフラ監視、機器のリモート制御、安全装置の自動化、セキュリティ監視
スマート農業環境・土壌・農作物モニタリング、農業機械制御、品種改良用データ収集
建設工事等ドローン等を用いた測量、振動・騒音の測定および通知、高度・水位・風速測定、有毒・可燃性ガスの検知および測定

センサーネットワークやウェアラブルデバイス用のアプリケーション接続にも使用可能、通信範囲の広さや壁などの障害物の影響を受けにくい特性があり、無線LANアクセスポイント(AP)が起動・動作する時間帯を指定する「ターゲットウェイクタイム」(TWT:Target Wake Time)機能を備えるためバッテリーの電力消費を低く抑えられ、屋外使用に最も適した無線LAN規格と言っても過言ではありません。