お薦めは「ワイヤレス」によるネットワーク整備
場所を問わない働き方やリモートワークはもはや珍しいことではなくなりました。フルHD(1080P)や4K映像に対応した高解像度かつ高品質なWeb会議の登場もそう遠い未来ではありません、そうしたなか大容量データを用いるAIなどの最新テクノロジーの活用や高解像度映像を用いた配信がビジネスシーンでスタンダードになるには安定的かつ高品質で高速なネットワーク環境の整備が不可欠。
また数年おきに配線工事やレイアウト変更など発生しがちなオフィスの大規模改修を伴う「有線」ネットワーク整備は、『無線』を用いたネットワーク整備と比べると工期やコスト・タイムパフォーマンスにおいて若干ながらとは言え劣る傾向が見られます。
大きく向上した性能
数年前のWi-Fi規格である6/6Eでは超細密画像配信やAIの有効活用と言った大容量・大規模なトラフィックが必要な状況に追い付いていくことが難しくなっていくことが予見されています。「7」対応のPCやスマートフォンの普及はこれからとは言え、先を見越してネットワーク機器や対応デバイスへの転換に向け徐々に先行投資に舵を切れば、慌てて導入を急がなくてよくなるメリットが生まれます。
実は「6/6E」対応の端末でも、「7」対応ルーターやAPに接続した場合、 「6/6E」対応のルーター・APとつなぐ場合より平均パフォーマンスが約30%以上アップするという調査結果が報告されています。調査ではネットワーク接続スピードから安定性、消費電力性能等に至る全ての指標において「7」の優位性が顕著になっています。
スループット(実行速度)を左右する条件の一つである「7」の変調方式は、デジタル変調信号の品質を示すエラーベクトル振幅(EVM)が「6・6E」より格段に優れ、「端末の受信強度が上がり、通信を阻害しているノイズを大幅に減少」させていることが、パフォーマンス向上の一大要因となっているのです。
IoT製品向けには
目下のところIEEE802.11ah(Wi-Fi HaLow)規格の活用が検討されています。これは920MHz帯を利用する免許不要の通信規格、従来型と比べ1km程度という長い伝送距離、他のLPWA(省電力広域ネットワーク:Low Power Wide Area)より一段速い数Mbps程度のスループットが特徴。従来のLPWAでは難しかった画像や動画の伝送が可能で国際標準のフルオープンなIPベース規格です。HaLow以外ではLoRa、SIGFOX、NB-IoTなど様々な通信規格が存在、少ない電力で数キロ〜数十キロの広い範囲で通信が可能な特徴を持ち、電池など比較的省電力を用いた年単位の長期稼働が可能でコストを安く抑えられるのもメリット。
ホームIoT製品向けセンサー機器や流通・飲食業界向けのタブレット端末やレシートプリンターを始めユニークな端末の開発も進んでいる状況。北米や台湾では、長距離伝送を活かした車両間通信による安全運転支援、信号機制御などのモビリティ分野でも活用が進みつつあります。
有望視される家庭向けのIoT活用
伝送距離が長いHaLow規格は、スマートホーム向けの共通規格である「Matter(Apple・Google・Amazonをはじめ米IT企業280社以上が参加する無線通信規格標準化団体が策定)」と相性がよく、テレビから照明、空調やエアコン、ロボット掃除機・洗濯機など生活家電を一元的に接続して手持ちのスマートフォンやタブレット端末からコントロールできる『ホームIoT』システムを広げるキーとなり得ます。車から屋外設置の各種機器、セキュリティカメラ等を含めた住居内ネットワークを横断して活用でき、一般家庭への普及が大きく期待されるのです。