【Wi-Fi7】320MHz帯域幅利用時の注意点

早期にWi-Fi7導入を検討されている方々には、関心の高い超高速の帯域幅を実際に使えるか問題。「7」のデータ伝送速度は6GHz帯の320MHz帯域幅が利用できれば旧規格の倍以上、チャネル(データ送受信用の周波数帯)も格段に増えており、接続可能なクライアントデバイス数も倍増しています。

実際2本アンテナにおける「6」の通信速度は最大2402Mbpsにとどまりますが、「7」の320MHz幅の利用では最大通信速度は最大5764Mbpsとなり2倍以上のスピードアップ。ただし「7」対応PCと謳っていても、現在のところ320MHz幅を使えるかはPC機種によりけり(160MHz幅の接続では最大通信速度は2882Mbps)なのが実情と言えるのです。

こうした状況は各メーカーにより技適(技術基準適合証明)マークの取得がバラつきをみせているため。じつは現時点で法的・技術的にも対応済みとなっているのは「ASUSなど少数の海外メーカー」かつ「Copilot+PC」モデルのほんの数機種などに過ぎないのです(8月上旬時点)。

組み合わせパターンにより異なる対応状況

現状において「7」対応PCは、「(総務省による)技術基準適合証明(技適)、対応ドライバーバージョン、WindowsOS11バージョン、PCファームウェア」の四つの組み合わせケースに応じて利用可能な帯域幅が異なっており、「320MHz幅対応と記載されていながら160MHz幅しか使えないケース」や「320MHz幅に非対応とされているが実際は使えるケース」など混沌としています。

一例をあげれば、BE200D2WやFastConnectモジュールの搭載機種では、6GHz帯の160MHz幅までの通信しか許可されていない「技適番号」のものもあれば、320MHz幅の2つのチャネルが許可されている技番も存在、ドライバーバージョンによっても意図せず320MHz幅が使えたり、技適上は使えるはずだが使えないといった報告も相次いでいます。法的に許可されていなくとも、ハードウェアとして使えてしまったり(本来は電波法違反)その逆パターンもまた生じており、利用に際しては十分な注意が必要なのです。

そのため、実際の320MHz幅への接続には、「適合する技適番号・対応ドライバー・UEFI上での320MHz幅の許可の有無、対応ファームウェアへのアップグレードの有無」の最低四条件の確認が必須と言えます。

検証には

基本的にWi-Fiモジュールは「UEFI」上に書き込まれているパラメーターを参照して動作するもの。出荷時に既に320MHz幅パラメーターが有効化されているケースやBIOSアップデートによりパラメーターを書き換える場合もあるのです。

またOS11ではバージョン24H2へのアップグレードを皮切りに「7」対応が実施される予定ですが、現行のバージョン23H2であってもOS依存しない4KQAMや320MHz幅に関する機能は利用可能となっています。そうは言っても厄介なのが今後、320MHz幅への接続可能なPC等の端末を確認する方法。購入するPC本体表面に技適番号が記載されていれば、総務省電波利用ホームページ(技術基準適合証明等を受けた機器の検索)の「登録証明機関による工事設計認証に関する詳細情報」から詳しい対応状況の確認は容易なのですが、近年、技適番号が本体に見当たらないものが登場、その場合はUEFI画面を開いて確認しないと分からないと言った非常に判断に困るケースも考えられます。

そうしたなか『Copilot+PC』と呼ばれるAI搭載の最新PCは、「7」対応通信モジュールやOSバージョン24H2を先行して搭載しているものが多く、OS上での速度確認やMLOなど関連機能を正式サポート、比較すれば検証用マシンには最適と言えるでしょう。

「7」を用いた多彩な活用シーン

将来的に大規模トラフィック需要が予想されるビジネスシーンにおいて、必然的と言えるのがそうした状況にもスムーズに対応できるネットワークインフラの存在。対応可能なPCやスマートフォンの普及はこれからではありますが、人手不足が深刻な建設や輸送、また介護などの現場におけるアプリやツールの有効活用、4Kを用いた映像送受信など多様な活用シーンが見えてきます。大規模なAIの有効活用向けや大人数であっても高画質で音声のクリアなウェブ会議が開催可能になるなど、身近なところでも用途は限りなく広がっていきます。

活用に向けては、これまでの貧弱なネットワークインフラからの脱却と強化、見直しもまた必須。たとえば対応するスイッチングハブもハイエンドであれば10GbE、ローエンドでも2.5GbEレベルが要求される可能性が高いのですが、当然対応するLANケーブルやルーターAPなどのネットワーク機器、セキュリティ製品もまた徐々にバージョンアップしていかざるを得ません。

そうは言っても不確実で変化の激しいビジネスシーンで生き残りを図るには、ネットワークパフォーマンスとユーザー体験の向上につながるネットワークインフラ整備への先行投資は将来的に避けて通れないミッションの一つであることは間違いなく、これからのIT戦略を決定していくうえでも重要な要素と言えるのです。