空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」のゆくえ

米国にて先月発売されたばかりのこの製品ですが、超高額(約53万円)な値段が注目される一方、もたらされたインパクトはどうだったのか?
今回はこの話題を簡単に取り上げます。

他製品との画質や操作性の違い

アップル社が新たに提唱する「空間コンピューティング」。
ゴーグル型のヘッドセットを頭に装着してディスプレイで視界を覆い、目に見える世界をデジタルに置き換えて眼下に広がる新しい世界を体験できる製品です。

使ってみたところ従来からあった製品との違いが際立ちます。

一つが画質。画像の精細さが他製品よりもかなり高く、見やすいのが特徴。3DCGから動画、ウェブブラウザーの文字まで精細かつ綺麗です。内蔵されたカメラにより周囲の様子を見ながら作業できるのも優れた点。装着したままでも部屋のなかを歩き回れ、現実の空間には存在しない物体やウインドウが浮かんでいるシュールレアリスム体験は斬新です。

操作感も大きく違います。VR機器の多くはコントローラーを持ちながら両手で操作を行うパターン。目の前のヴァーチャル画像を触りつつ操作します。この製品にはコントローラーは用意されていません。手で操作しますが、もっぱら「目線」と「指」を用いるのです。手を持ち上げつつゴーグル内に表示された画像を触る操作はより直感的です。また必要以上に手を持ち上げる動作もいりません。操作したい場所に視線を合わせ、親指と人差し指を打ち合わせてタップすれば操作できます。

ハイエンドな性能の理由

ゴーグル空間に表示された画像に視線を合わせて指を使って操作できるこの製品、片目4Kと言われる解像度のソニーのマイクロ有機ELディスプレイ、Mac・iPad上位機種に搭載されたM2プロセッサー、位置認識処理用R1プロセッサー等を使用しています。視線認識技術は高い精度を誇り、両目の位置間隔(IPD・瞳孔間距離)の自動調整機能を備えます。本体重量は約600グラムと比較的重く、外付けバッテリー。そのため頭部装着時のフィッティングに関して締め付け過ぎると長時間の使用の際に大きな負担となります。

ここで見えてくるのが、品質を最優先した製品づくり。利便性・操作性の高さをアピール、コストを度外視してでも空間コンピューティングの普及に向けた足掛かりにしたいとのApple社の意欲が透けて見えてきます。

ポストスマートフォン時代のデバイス

コンシューマ市場向けVR・XR機器は、現状ではゲーム機としての利用がほとんど。その多くが価格帯は低めに抑えられており、収益構造としてソフトウエアやサービスが出回り、数が増えていけば行くほど収益が上がっていく仕組み。そのためApple社としてはゲーム用における普及ではなく、将来的にビジネスや生活の一部での普及につながるモデルを想定しているものと考えられます。

空間コンピューティングを実現する手段としてこの製品の需要が高まりを見せるには、紆余曲折が予想されます。これまで用いられてきた物理的ディスプレイ画面の作業から、ゴーグルを用いて作業をしたりコンテンツを楽しんだり、コミュニケーションをとったりするライフスタイルへと転換していくのか?
近未来を見せるデバイスとして登場したこの製品の真価が問われるのは、まだまだ先になりそうです。