AI「Copilot」とMicrosoft365機能拡張の進展

晩秋の11月、提供が開始された「Microsoft365 Copilot」(以下、Copilot)ですが、Microsoft365アプリケーションを用いた資料作成やデータ分析といった作業を生成AI(人工知能)の活用を通して効率化できるツールとして話題になっています。自然言語を使って指示を出せば、欲しい資料が出来上がるデモを見て期待に胸を躍らせた方も多いのではないでしょうか。

今回はこの話題を取り上げていきます。

現状と課題

自然言語(プロンプト)を用いて指示すれば、メモ書きの製品仕様書を基に「Word」で正規の製品仕様書を書き起こしたり、「PowerPoint」による製品カタログの作成、「Excel」を基にしたデータ整理や分析、「Outlook」によるスケジュール管理やタスクの追跡、「Teams」を用いたコミュニケーション支援など様々な活用が展望できます。

このサービスの利用に必要なライセンスや価格(1ユーザー月額4,000~4,500円)は既に一般公開されておりますが、より多くの人が利用できるにはまだまだ時間がかかる見込み。

気になるのが日本語に完全には対応しきれていない点。たとえば『Excel in Copilot』は、2024年の初めに追加言語サポートが予定されていますが、追加言語に日本語が入るかどうかは不明。またCopilotの『利用前』に確認すべき重要事項として「データの保存方法」「データの共有状態」「データの保存場所」の三つが挙げられています。

一つずつ見ていきましょう。

データの保存方法

事前に既存のMicrosoft365のデータが適切な状態かどうかを確認しておくべきです。Copilot in Excelのサポートページに記載されている内容ですが、「Copilotを利用前にはExcelデータをテーブル化しておく必要あり」とされ、適用されていない場合にはCopilotを使えない可能性も見えてきます。

Copilotが業務効率化に貢献するためには、利用者がMicrosoft365を正しく活用、必要データを適切に蓄積しておくこと。たとえば将来的にExcelを用いた文書作成は適切ではなくWordを使うべきと言ったことが重要になります。

データの共有状態

次にデータの共有も要注意。組織変更や人事異動でアクセス権の所有者に変更が生じた場合、管理者は新規にアクセス権を付与しますが、不要になったアクセス権の削除までは行わないのが一般的。

たとえば「Microsoft SharePoint」のサイトで個人的にファイルを共有したり、ファイル単位でリンクを共有してしまうと、ファイルの共有状況を誰も把握できず「過剰共有」になってしまうこともありえます。

MicrosoftはCopilotの利用に際して「過剰共有に対する注意喚起」を行っています、というのもCopilotは利用者のアクセス権の範囲内しかアシストしないため過剰共有されたデータも対象となり、社外秘情報などの流出やセキュリティ事故につながりやすいためです。

データの保存場所

また重視しておくこととして、どこに保存されているのかを把握して場所ごとに保存方法が異なることを理解しておくこと。「SharePoint」と「OneDrive for Business」はデータ保存方法が異なり、SharePointデータは『場所』、OneDrive for Businessデータは『人』に依存します。

とするとファイル作成者のユーザーアカウントが退職などを契機に削除された場合、SharePoint上ではデータが保持されますが、OneDrive for Business上では一定期間後にデータが削除されるといったことが生じます。

たとえばOneDrive for Business保存データには、「Teamsチャットの添付ファイル」があり、ファイル作成を行い、それを添付したユーザーアカウントごと削除された場合にはファイル自体も削除されてしまいます。大事なデータのやりとりをする場合には、保存先の特性を理解した上で適切な方法を選ぶことが今後必要になってきます。

Microsoft365サービスにはCopilot以外にも生成AIを体験できるチャット・ビデオ編集・共同作業と言った下記の機能が含まれ、今後ますます業務の効率化が進むことが期待され注目を集めています。

AIツール「Bing Chat Enterprise」

Copilotとは異なった生成AIの世界を体験できるのが「Bing Chat Enterprise」サービス。

たとえば「Microsoft Edge」を使いSharePointファイルを開き、右上のアプリバーに表示されるCopilotのアイコンをクリックすれば右側にBing Chat Enterpriseの画面が表示され、このチャット入力エリアに「このページの要約をお願いします」と入力すると、ファイルの中身を検索して要約が実行されるのです。

動画編集用ツール「Clipchamp」

上記は、「Windows11」OSに標準搭載されているビデオ編集アプリケーションツール。Microsoft 365ではこれまでファミリープランのみへの展開でしたが、今回商用ライセンスにも追加されました。

Clipchampが加わったことで、Microsoft 365サービスを用いた動画の収録から編集、保存、共有までの一連の作業が可能になりました。商用ライセンス版のClipchampは、プロジェクトデータの保存先と動画ファイルのエクスポート先にOneDrive for BusinessやSharePointを指定できるとともに、編集されたファイルも共有できるためリアルタイムではありませんが、動画の共同編集も可能になっております。

共同作業向けツール「 Loop」

上記は、「コンポーネント」「ページ」「ワークスペース」の3要素で構成される共同作業用アプリケーションのこと。

核となるのが、リアルタイムでメンバーと共同作業をする最小単位のワークスペースであるコンポーネント。Teamsユーザーであれば利用可能。ページはコンポーネントをまとめて整理、ワークスペースはページをさらにまとめて整理できるツールです。

たとえばTeamsチャットメッセージにLoopコンポーネントを貼り付けメッセージの共同編集が可能。別のグループチャットのメンバーにも編集に加わってほしい場合、このコンポーネントを別のチャットルームに貼り付けます。現時点では『プレビュー中』ですが、チャットのコンポーネントをコピーしてチャット本文に貼り付け送信することも可能。これによりチャットを受信した人でも、受信したチャットを共同で編集できるようになります。