迫る電子帳簿保存法への対応

昨年施行された改正電子帳簿保存法に関する宥恕期間が本年12月末を以て終了。来年早々、企業には要件を満たすシステム導入や新たな業務フローへの転換が迫られています。

識者は改正電帳法対応を機に大幅に増えると予想される現場の負担を減らすためには、新システム導入だけでは不十分であり、業務の自動化が必須だと語ります。ある企業は法改正対応にあたり、仕入先からメールで送られてくる請求書データを帳簿保存システムに保存する必要が生じました、しかし請求書の送信方法など業務仕様がバラバラで人手の作業には当然ながら限界があります。

法改正対応の注意点や対象業務をRPAで自動化した企業事例を今回ご紹介します。

現場負荷を高めるだけのNG対応

少子高齢化による労働人口の減少や働き方改革などを通じて、今後ますます生産性の低下が予見されます。注目されているのが業務デジタル化。個人能力に依存せず『生産性の向上』を実現するデジタル化を国は強く推奨、その一環として改正電子帳簿保存法への対応が求められています。

法改正対応で注意すべき点ですが、電子取引データをそのまま保存することが定められ、データを書面に出力した『書面の保存を認める措置』は廃止されます。

ここで述べる電子取引とは、取引先とのメールのやり取り、Webサイトを介したデータのダウンロード、ExcelやCSVによるデータの取得などを指します。また、電子取引データを保存する際は、条件により「真実性」および「可視性」の要件を満たすこと。

「真実性」の要件とは、データ改ざんや削除ができないシステムを利用すること。「可視性」の要件は、税務署の求めに応じて日付や取引先名、金額で取引を検索できること。電子取引には、上記要件を満たさねばなりません。

電子取引データの『保存』については、令和5年度税制改正大綱にて「売上高が5000万円以下」「該当データがすぐに出せる」の2条件を満たせば、「可視性」の要件が『不要』となりました。しかし売上高が5000万円以上の企業は、引き続き真実性と可視性の要件を満たすべく準備が必要です。ただし要件を満たすシステムを導入しても対象業務を手作業で実施するのでは、現場従業員の負担が大幅に増えてしまいます。

実際の対応事例の紹介

そこでRPAソリューションを導入、この法改正に対応された企業の事例をご紹介します。

この企業では仕入先からメールで送られる請求書データファイルを帳簿保存システムに保存する必要が生じました。請求書の送信方法は、メール本文に請求書ダウンロード用URLが記載されているケースやPDFファイルがメールに添付されているケースなどさまざま。仕入先が直接メールを送信するだけではなく支店の営業担当者が代理でメールを送信するケースも判明しました。

そのためメール業務の自動化に特化したRPAソリューションを使い、請求書メールの受け取りから請求書データファイルの開封・保存までの一連の流れを自動化。

自動化に向け、メールパターン、ドメイン別データの洗い出しから保存対象データの特定まで幅広く分析することから始め、帳簿保存システムへのデータの受け渡し方法を確定、利用端末やツールを決め自動化システム開発とテストを繰り返しました。

その結果、RPAでメール添付されたPDFファイルを保存、タスクスケジューラー機能を使い、件名・メールアドレス・ドメインなどの複数情報を基に対象メールかどうかを判断して帳簿保存システムに請求書ファイルを引き渡して保存することが可能に。

また仕入先へのメール返信や保存ファイルのメール転送、保存完了のメール通知を処理対象のメールの数だけ繰り返し、最後に該当するファイル名を変更、請求書データ保存を完了させるフローを実現しました。

法改正に則したデータ保存とは

本対応において他に重要となってくるのが、取得データを種類ごとに分けて保存すること。

データを管理する箱はいくつあっても問題ではなく、PDFデータはPDFに特化、テキストデータはテキストに特化したファイル管理サービスといったデータ種別ごとに分けて保存することが鉄則。

Web・メールEDIのテキストデータのレイアウトは取引先ごとに異なり、それぞれのデータを開いて日付や取引先名、金額のデータを取り出し、PDF化して保存するのは時間と手間がかかります。そのため、データを種類別に分けて保存すれば作業時間は短縮できます。

EDIデータであれば、販売管理システムを使ってデータ保存が可能ですが、この方法では先に述べた真実性と可視性の要件を満たせません。

真実性の要件を満たすには、全データを訂正や削除ができないようパスワードをかけ保存が求められますが、販管システムでは訂正や削除ができます。外部データベースに集めてパスワードをかければ真実性の要件は満たせますが、可視性の要件を満たす機能を追加で実装しなければなりません。

たとえば日付や取引先名、取引金額などの細目で全文検索できる操作画面や全取引のデータ取り込み機能、伝票ごとの金額集計、データのCSV出力といった機能も全取引先の数だけ必要です。そのため、改正電子帳簿保存法の法的要件を満たすデータ管理サービスの利用が手っ取り早いと言えます。

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