突然のデータ損傷・消失に備える
たとえばバックアップ用に用意したHDDやSDD、DVDやUSB等のメディアやストレージ類、使おうとするとなぜか読み込んでくれなかったり、突然ファイルの損傷や消失が発生したりとアクシデントに泣かされた経験を持つ方は少なくないと思われます。今回はこの話題を取り上げて解説します。
劣化を防ぎ正しく使う、長期保存に向いたストレージ・メディア
まず重要となってくるのが、保存用に準備するストレージ・メディア等の寿命・強度・耐久性などの特性を理解して把握できているか?
たとえば、DVDなどの光学メディア類ですが、保管場所の状況次第で非常に速く劣化が進みます。高温や湿気・紫外線・衝撃にも弱く、必ずしも耐性・寿命が長いとは言えません。
またUSB・SDカードと言ったフラッシュメモリーは、書き込み可能な回数に上限が設定されており、保証期間を超過したり、正しく抜き挿しできなかったりすると劣化が進みやすいのです。
そのため現在、最も長期保存に向いているとされているのが、外付けのHDDやNAS、クラウドストレージとも言われています。
フラッシュメモリーのメリット・デメリット
小型、携帯や持ち運びに便利かつ、入手しやすい価格帯の製品も多いフラッシュメモリー、製品寿命があるのは当然ですが製品の仕様や特性を読み誤って購入すれば、コストもタイムパフォーマンス的にもまったく割に合わないものになりがち。
たとえば、書き込み中なのに抜き取ったり、長期間に渡って放置したり、寿命を超えて使い込んだりと誤った使い方ではすぐに壊れます。また安価かつ読み書きスピードの遅いコスト・タイムパフォーマンスに問題の多い製品ほど、壊れやすい傾向にあり、耐久性が低く、寿命は短いのです。
SMART情報の活用
そうした劣化状態などを事前に把握しておくには、なんらかのツールやソフトを用いるのが効果的。
外付けHDDやSSDには、ベンダーから提供されたS・M・A・R・T情報(以下、SMART)と呼ばれるストレージ内部状態を専用ツールから読み取りできる場合があり、そうしたツールが備わっていれば状況把握が容易になります。詳しくはこちら
他にもUSBメモリーの状態をチェックできるフリーソフトを使うこともできます。
フラッシュメモリーの仕様では、セルと呼ばれる記憶素子に0/1のデータを記録、密度を高める策として1セル内に数ビットサイズのデータを保持させています。セルごとの書き換え耐久性能は安価なものほど低く、一般的に容量が大きいほどストレージにおける書き換え可能な容量は増していくことが判明しているのです。
延命策は
USBメモリーの使い方次第では製品の延命が可能です。たとえば、容量の半分程度を空けておき、随時書き込みなどは行わず書き込み回数を減らしたり、書き込んでも不要ファイルはすぐに削除したり必要最低限にとどめます。長期間の放置は避け、保管場所や保管期間の棚卸しなど定期的なメンテナンスの実施は延命に欠かせません。USB抜き差しなどによる接続端子の摩耗にも配慮が必要です。
またSSDでは、書き込み総容量(TBW:Tera Byte Written)と保証期間が上記SMART情報から確認でき、その情報を基にしたある程度の状況把握が可能です。
HDDの場合
やはり、SMARTを参照するのがストレージの健康状態把握には最適です。稼働状況における注意が必要な判断のための指標として、たとえば「代替処理保留中のセクタ」「回復不能セクタ」項目に注意すべき点が多ければ寿命に近づきつつあると言えます。HDDも頻繁な電源のオンオフ、強制終了の多用を続ければ劣化は進みやすく、埃やハウスダスト、直射日光、高温多湿や落雷、静電気などの故障につながりやすい外部要因にも備えておくべきです。
参考情報として、HDDの製品寿命は一般的に3~4年(26,000~35,000時間)ほどと言われています。サーバ等の過酷な環境での利用では、さらに寿命の低下が見込まれ、5年以上は故障が急増することがデータ上もあきらかになっています。HDDの突然の故障に起因するデータ消失や損傷が企業に与えるダメージは、少なからず業務全体にも影響を及ぼすもの。
そうした事態に備え適切にストレージ自体の管理運用ができているか?企業における構築整備の在り方が問われているのです。