ChatGPTアップグレード版の利点を解説
今回のアップグレードでの目玉ですが、ベータ版とはいえプログラムを書かずとも質問に答えれば用途にあわせた自分専用のGPTを作れる「GPTs」がその筆頭に挙げられます。たとえれば新商品のコンセプトを伝えると、商品名やキャッチフレーズを考案したり、ビジュアルデザインを作成したり、プレゼンの構成原案まで人間の作業を代行して自動生成できるのです。
マルチモーダル化の実現
加えてBingによるWeb検索やDALL-E 3による画像生成がChatGPT内で同時に使える仕様に改善され、使い勝手が大きく増しました。マルチモーダルとは正確に言えば「multi」+「modal」という言葉を組み合わせたコンピュータ用語の一種です。
「モーダル」という言葉にはAIへの入力情報の種類(画像、音声、テキストなど)の意味が含まれ、マルチモーダルAI=複数の種類の情報を一度に処理するAI技術と言えます。ChatGPT登場より以前ではAIの技術的未達やコンピュータの情報処理能力の限界から「シングルモーダル(たとえばテキスト情報のみ)」しか処理できませんでしたが、機会学習によるAI技術の進化でマルチモーダルが可能になったのです。
自作GPTの作成が可能に
ユーザーがノーコードプログラミングで独自のGPT(Generative Pre-trained Transformer)を作成できる「GPTs(ジーピーティーズ)機能」。
本来であれば、ChatGPTは「汎用」GPTなのですが、今回登場した『GPTs』機能を使えばユーザーごとにカスタマイズ、さまざまな用途に合わせて利用できるメリットが生まれます。以前からChatGPTには応答の際の言葉遣いや雰囲気をユーザー側の好みや目的に合わせて事前に設定しておくカスタム設定機能が備えられていましたが、今回発表されたGPTsは、こうしたカスタム設定をより柔軟かつ深いレベルまで行えるため、マルチモーダル化とあいまって有用性を一層高める効果が高いのです。
GPTsは、ChatGPT Plusなど「課金ユーザー」のみ対象のサービスですが、ユーザーが作成したGPTを販売して売り上げの一部を受け取れるストア機能も近いうちに開設される予定です。
GPTs作成の手順
ChatGPT画面上の[Explore]テキストリンク→[Create a GPT]から行います。『+』ボタンをクリックするとGPTの作成ヘルパーの「GPT Builder」画面へ移行、質問に答える形で自分の作りたいGPTの説明をしていけば簡易版ならものの数分で仕上げられるはずです。
要注意事項ですが、ベータ版のためかGPT Builderは英語により質問してくる場合が大半であり、事前に日本語に対応できる設定に切り替えておく必要があります。
①カスタムGPTの命名
たとえばメーカーの商品企画担当者であると仮定、新製品の「名称やキャッチコピー」、「キービジュアル」、企画プレゼンテーションの際に使うスライドのベースとなるイメージを生成するGPTを作りたいとGPT Builderに要望を出します。
GPT Builderは要望を受けると、GPTの名前を提案してきます。名前がしっくりこなければ何度でも依頼できます。
②プロフィール画像の自動生成
名前が決まれば、次にGPT Builderはプロフィール画像を生成してくれます。この画像は、作成中のGPTの機能をシンボライズしたアイコンのこと。気に入るものができるまで何度でも作り直しできます。
③質問に答えつつGPT作成
GPT Builderは先に伝えた自作GPTの概要に基づき、より詳細に質問してくるため、順次答えながら進めます。ここでは、扱う商品のカテゴリーを説明しながら、商品名やキャッチフレーズ、プレゼンテーションについて求める要素も伝えます。GPT Builderからはさらに必要な情報が出てきた場合、改めてユーザーに質問するようGPTの設定を行ったことが返答されます。
④ガイドライン決定
自作GTPsとの会話時の言葉遣いなどガイドラインを決めます。会話形式でGPTを作成するここまでのプロセスは、上部のCreateボタン「オン」状態で行ってきましたが、「Configure」ボタンをクリックして表示を切り替えると、いつでも自分が設定した内容を確認することができます。Configure画面では、GPTの名称やプロフィール画像、説明など直接変えられ、必要な知識や情報が記されたファイルを読み込ませて学習させ、より専門的なGPTに仕立てることも可能です。
実際の利用状況
自作GTPsのプレビューエリアで「外出にピッタリの保温性の高いコート」というテーマを与えたところ、商品名とキャッチフレーズの候補を3つずつ挙げてくれました。その中から「スタイリッシュ、ヒートコート」の名称に「寒い夜長に最適、体温まる装い」というキャッチコピーを選択すると、それに基づくキービジュアルとプレゼンテーションの本構成も生成されました。
感想ですが、プレゼンテーションの基本構成に沿ったスライドの生成イメージは実際には余計な要素がたくさん付加されており、1枚当たりの要素数が多過ぎるため、よりシンプルに整理をし直す必要性はありますが、ベースイメージと考えるとそれなりに充実しており、参考にしたり、余計な要素を消去すればイメージカットとして挿入することもできそうだと感じました。
実務で使うには
Create画面でより精緻な設定を行ったり、Configure画面のファイル読み込み機能を使い過去の自社商品や自社が保有する商標などの情報を生かしたりなど創意工夫も必要になります。自動生成といっても、まだ生成したものをそのまま使える域まで達してはいません。
しかし、これから様々な業務や活動に普及浸透していけば活用の幅が広がりAI利用の画期的な幕明けとなる可能性を秘めています。