AI活用に不可欠なものとは
AI活用の拡大に伴うワークロード(AIを組み込んだシステム)の進化およびその学習や推論に使われたデータを処理できる効率的なネットワーク普及やAIエンジニア育成と人材確保は将来的な課題となっています。
今回はこの話題を掘り下げて解説します。
AI向けネットワークインフラ拡充への課題
まずワークロードの効率的処理には、従来型のデータセンター処理にとどまらないネットワークインフラの構築や整備が重要になってきます。
たとえば学習や推論では、膨大なデータがネットワークを介して往来しており、ネットワーク性能が処理能力に直接的に影響を与えることが知られています。そこで通常のワークロードより低いレイテンシ(遅延性)と高速スループット(実効転送データ量)が重視されているのです。
これはネットワークで相互接続された複数サーバとGPU(グラフィックス演算装置)間で同時並行的に処理が行われ、必要とされるネットワーク接続数は一般的なデータセンターにおけるワークロードの数倍に登ることが予測できるからです。
またリソースやデータ量もこれまでの数十倍、ネットワーク停止や処理性能低下を防ぐため考慮すべき対策も大きな負荷になりがち。演算処理も時間を要すためネットワーク障害を発生させない高い信頼性をいかに確保しておくかは大きな課題です。
効果を発揮しやすいアーキテクチャは
たとえばGPU処理をオフロードさせる「DPU」(データ処理装置)を用いた手法、またネットワーク機能を搭載する「スマートNIC(ネットワークカード)」(SmartNIC)。スマートNICはCPU(中央演算処理装置)やGPU(グラフィックス処理装置)のデータ転送処理をオフロード、転送速度改善に効果が高いことが判明しています。
他にもイーサネット活用では「RDMA over Converged Ethernet」(RoCE)技術を用いたメモリ間のデータの直接転送が可能で従来のようにCPUを介さず直接メモリにアクセスできる高速性や低いCPU使用率・低遅延性はメリットの高いものです。
AI人材確保競争の時代
諸外国と比較すればAIの活用に対応できる人材に見劣りせざる得ないのが現状です。
そうはいっても、もはやビジネスにおいて欠かすことが出来ないと言っても過言ではなくなりつつあり、活かすも殺すも人材次第です。
2014年頃から機械学習およびAIに関連する専門職は約30倍ほどに増加したとされ、今後も需要が高まりつづけるのは間違いありません。そうした需要に追いついていかないのが供給サイドであり、需給バランスの不均衡は共通認識となっています。
近年ではAIへの過大な期待や評価は一巡、より計画的で具体的なAIを活用した業務への取り組みが求められることになりつつあります。
取り組み事例
たとえばコーディングAIであれば「GitHub Copilot」や「OpenAI Codex」と言ったツールの活用が進んでおり、テストケースの生成やテストデータ用のテキスト生成、テスト結果のレポート作成などこれまで熟練の人手を要したテスト向けに活用されています。
そうした場合にも、生成コードが規定の基準を満たしているかのチェック体制や担保は大きな課題にあがっており、本番環境に投入する前には正確性やセキュリティ、コンプライアンスチェックのプロセスを設けることが必須となっているのです。