Wi-Fi7のもたらすインパクト

Wi-FiAllianceによるIEEE802.11be(Wi-Fi7)発表から国内メーカーによる対応製品発売まで急激に進むWi-Fi技術の進化とその加速化。

最新規格IEEE802.11be(以降は本規格)は現状では「Draft(ドラフト)」の暫定規格。「アーリーアダプター(早期導入層)」ユーザーは、現段階でルーターなどの対応製品を導入して大丈夫なのか?不安な方も多いものと思われます。そうした方にも分かりやすく導入に向けたヒントをお伝えします。

経緯

旧規格である通称「6」IEEE 802.11axは、2019年に正式規格として登場。同規格では従来のIEEE 802.11シリーズが想定していた2.4GHz帯と5GHz帯に加え、競合が少ない6GHz帯の利用を想定、特に6GHz帯対応製品は非対応製品と区別する目的で「6E」と称しています。日本においても2022年6GHz帯の一部がアンライセンスバンド(無線局免許なしで通信できる帯域)として 6E対応機器の国内出荷が可能となったのです。

総務省は昨年12月に電波法に基づく技術基準/無線設備規則を改正。本改正は、IEEE 802.11be規格の国内導入に必要な技術的要件を定めたもの。最大320MHz幅での通信を合法化(従来は最大160MHz幅)。本規格の特徴として利用可能な電波帯域を最大160MHzから320MHzに広げており変調の高度化(1024QAM→4096QAM)やMLO技術導入により、理論上の最大通信速度が9.6Gbpsから46Gbpsと最大約4.8倍に引き上げられています。ただし現在ブロードバンドサービスの最大速度は10Gbpsが主流、この高い理論値をすぐ生かせるわけではありませんが、中長期的視点では実効速度の改善につながり、業務の効率化や生産性向上をもたらすインパクトの高さなのです。特にこれまでのように各フロアや執務室に有線LANを整備する必要がなくなるメリットが大きいのではないでしょうか。

杞憂

国内メーカーからもWi-Fi CERTIFIED7を取得したWi-Fiルーターが本年2月に発売されましたが、先述の通り本規格はまだ未確定。

IEEE802.11シリーズの無線規格にあっては、以前にもDraftの認定プログラムが登場したり、対応製品が発売されたりしています。その際にはDraftから仕様が大幅に変わることがなく、Draft準拠製品も規格確定後に「正式規格に準拠」と見なされていました。

読者の皆様におかれましても「未確定規格の製品を導入して大丈夫なのか?」との不安は拭いきれないものとお察しします。

結論から申し上げると心配の必要は全くありません。ポイントはIEEE内での議論状況にあります。本規格を議論しているタスクグループでは昨年6月から「Draft 4.0」の議論が進行、Recirculation Ballot(投票再実施)という標準化「前提」の細部のすり合わせが行われている段階であり、本規格にさらなる新機能が搭載されるリスクは少ないのです。そのため対応通信チップの再設計を求められるような仕様変更は想定外。

また現在発売されている製品は『Wi-Fi CERTIFIED7認証』を取得済。認証取得には、「新規格における互換性」はもちろん、「旧規格との互換性」や「他ベンダーとの互換性」を確保することが求められ、新旧規格で互換性を担保した運用が行えるお墨付きを得たため、同認証を得ているWi-Fi7対応機器については安心して導入して大丈夫でしょう。

背景

昨年12月の総務省による「認可」から「Wi-Fi CERTIFIED7認証の取得」、製品の開発から「発売」までスピーディーな認証取得、販売が実現した背景には、半導体メーカーとの開発へ向けた丁寧な共同作業や設計検討があります。電波法や関連規則類の改正タイミングは、メーカー側で把握は難しく、早期発売にはハードウェア面でも半導体開発のリードタイムなどに苦心、ファームウェア調整に細心の注意を払う必要が生じるためです。ルーター動作に欠かせないファームウェア開発ではセキュリティ機能を始めとする独自機能の作り込みが重要となってくるのです。

「7」規格は、かなり早く一般から認知され始めており将来的主流になるには中途半端な製品では消費者にそっぽを向かれかねません。国内メーカーの迅速な製品リリースは高品質な製品に仕上げることにこだわり続けた結果であるとアナウンスされています。また『7』 では「最大通信速度46Gbps」という超高速通信実現へのポテンシャルに期待する層へのアピールが重視されているのです。

高速かつ安定的通信の実現へ

以前のルーター製品では、初期状態でアクセスポイント(SSID)を「2.4GHz帯用」「5GHz帯用」「6GHz帯用(6E対応モデル限定)」の個別に周波数帯が割り当てされていましたが、新製品では初期設定でも6GHz帯用SSIDを2.4GHz/5GHz/6GHzのいずれの帯域からもアクセスが可能。これは新搭載された「MLO」機能の活用に向けた工夫の一つであり、ユーザーメリットが高いものです。

以前のWi-Fi通信では1つの周波数帯を用いた通信しか許容できませんでしたが、MLO対応の新製品では複数の周波数帯を同時に使っての通信が可能です。MLO対応のアクセスポイントと端末を組み合わせ、5GHz帯と6GHz帯の通信を自動的に切り替える「切替モード」を利用できます。これは従来製品における「バンドステアリング」よりも周波数帯切り替え時の遅延を低減できるとともに、複数チャンネルを束ねて1つのSSIDとして通信できる「同時モード」もあります。

MLO対応端末で使えばスループット(実効通信速度)を向上でき、このモードでメッシュネットワークを構築すれば、MLO非対応端末でも親子間通信のスループット向上による通信品質改善効果が高いのです。
『7』ルーターは現時点では高価かもしれませんが、機能面の向上やコスト・タイムパフォーマンスを考慮すればその導入メリットは計り知れないものです。この機会にぜひ導入に向け検討をおすすめいたします。