クラウドツール利用の弊害(リスクと対策)

ユーザーがクラウドツールの利用過多に陥りやすい問題は、新型ウイルス感染症の世界的大流行が要因の一つとなっています。複数ツールの導入ユーザーは、必要データが異なるシステムが分散して存在してしまっており、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を使用せず、データ連携問題を解決するためには新たなデータ連携用ツールを毎回導入しなければなりません。こうして社内に存在するツールは増加の一途をたどる悪循環に陥りやすい状況が生じるのです。

直面する課題

「クラウドサービスの役割や利用方法が複雑になり、パフォーマンス低下や事業収益の減少、ビジネスの停滞につながる恐れがある」と考えるシニアITリーダーは、全体の98%にも上ります。本年7月にあるコンサルティング会社が公開したレポート「Innovate or Fade」では、欧州企業が直面している技術力不足に悩む現状を取り上げ、定番技術や最先端技術の導入、実装、効果的な使用に関する企業間の格差問題を指摘しています。

ある識者は、「データ保管場所が各所に分散する『データの断片化・サイロ化』は、企業において日常的に起こる問題」と指摘しています。「クラウド移行はさまざまな問題を解決する「特効薬」ではありません。多種多様なクラウドサービスを導入した結果、社内システムの一貫性が欠如したり、データの断片化が起きたりした企業は現実として多い」のが実情なのです。

企業のデータの保管場所は、単一のデータセンターに限定されず、複数の異なる「クラウドインフラ」や「オンプレミスインフラ」に散在するのがデファクトスタンダードになりつつあり「何年もの歳月を掛けシステムを拡張、企業間合併でシステムを統合したりした結果、複数のITインフラとサイロ化されたシステムを抱えてデータ運用が複雑になっているユーザー企業が見られる」と識者。

導入メリットは確かに多いのですが、導入を急ぎすぎた結果として課題が生じたケースでは、ユーザー企業が複数のクラウドサービスを導入したことでデータのサイロ化が進み、収益や事業成長の機会を逃す恐れが出てきました。下記に示すようなスキルが必須となる事態も見えてきたのです。

DBマネジメントやキャパシティープランニングの重要性の高まり

本年8月下旬頃にトヨタ自動車の部品発注システムで発生したシステム障害の例ですが、一時は国内14工場が稼働停止に至る事態に陥ったのは記憶に新しいもの。同社の部品発注処理を担うサーバ複数台のうち一部が、容量不足で利用できなくなったのです。その背景には、キャパシティープランニング(必要なストレージ容量を継続的に配備するプロセス)に失敗、処理に伴う十分な容量を確保できなかった問題があるとされます。

データベース管理者にとりデータベースのキャパシティープランニングやサイジング(必要なストレージ容量の予測)は必須のスキル。キャパシティープランニングとは単にデータベースファイルのサイズ拡大や縮小させる運用にとどまらない、将来見込まれるデータサイズを的確に予測して計画的に運用できるスキルのことを指します。

データベースの特性

一般的にデータベースとは、行と列、複数のテーブル(行と列の組み合わせ)から成り立つデータベースファイルで構成されており、データベースファイルにはバックアップファイルの他にもたとえば「Microsoft SQL Server」の一時領域である「TempDB」といった一時ファイルや、頻繁に使用する特定行に素早くアクセスできるようにするインデックスファイル、データベースにおける操作を記録するログファイルなどが存在します。

こうしたデータベースの構成要素を実装する方法はベンダーによってバラバラなのが実情。そのため公称サイズが同じでも、ストレージ容量が実際に占有するボリューム(記憶領域の単位)数は異なるケースが多いのです。

またデータベース保守メンテは、トランザクション(一連の処理)が急増してファイルサイズが突然大きくなったり、レプリカ(複製)やスナップショットを作成することで必要なストレージ容量が増えたり、複数HDDを組み合わせて1台のHDDのように運用する「RAID」(Redundant Array of Inexpensive Disks)構成を採用するとストレージボリュームがさらに増えたり、ディスク使用率が増加するとデータベースへのアクセスに掛かる時間が長くなるなど想定イメージとは全く異なるくせ者なのです。

まとめ

データの断片化サイロ化が課題となっても、クラウドツール導入トレンドはこれからも続くものと見られます。

識者は「ソフトウェアの使用方法と実装方法は、クラウドサービスの登場により根本的に変化しており、現在はAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)や、最小限のソースコード記述またはソースコードの記述なしのローコード/ノーコード開発、ビジネスプロセスオートメーション(BPR)などの技術によって、アプリケーションが実行できる作業は高度化している」と述べています。

こうした変化は、クラウドサービスにおけるデータ管理の複雑さを緩和するわけでは当然ながらありません。データ統合は今後も対処が必要な課題になってきます。システム間でデータ連携をするためのコネクターツールが市場に増えつつあることは、クラウドツールによってデータが分断されるという問題を克服するニーズが企業間で高まっていることを意味するからです。