「ChatGPT」等のAI活用に必要なものとは
「ChatGPT」などの生成AI(人工知能)はユーザーからの問いかけ(プロンプト)に対して応答する仕様。プロンプトが不適切だったり漠然としていて意味がないものだと望む結果は得られないことが多いのが実情です。今回は『生成AI(人工知能)』を有効活用するための「視座」や「術」を解説します。
有効な問いかけ(プロンプト)を編み出す戦術(タクティクス)
a | 解決すべき課題の明確化 | 解決したい問題やニーズをまずプロンプトとして明確に示すことが重要です。「最新アプリケーション向けのマーケティングキャンペーンについて斬新なアイデアが欲しい」などの個別具体的な中身を検討して提示出来ているか問われます。 |
b | 始めは単純な問いかけから徐々に複雑なものへ | モデルの理解度を確認するためにはまず単純なプロンプトから始め、より複雑なプロンプトへと拡張していく段階的なアプローチが望ましい。いきなり難易度の高い問いかけを始めることはおすすめしません。漸進的アプローチの方が急がば回れで、目的地に着実に近づくことが多いものです。 |
c | 自由形式による問いかけスタイル | 特定の回答をあらかじめ指定せず、回答が多様で広範な情報を含む可能性がある問いかけをすること。生成モデルは、制約や規則にとらわれず自由で多様な情報やアイデアを生成できる条件を与えた場合にうまく機能することが報告されています。 たとえば「マーケティングにソーシャルメディアを使うべきか?」と問いかける代わりに、「ソーシャルメディアプラットフォーム全体で注目を集める革新的な方法とは何か?」のほうが望ましいと考えられます。 |
d | 繰り返して改良・改善 | 最初のプロンプトから得たフィードバックに基づき、内容を改良・改善していくこと。「一般的なコンテンツマーケティング戦略についてのアイデアを教えて」と問いかけた後、「留守番ペットの満足度をモニターする製品のコンテンツマーケティング戦略を進めるには」という問いかけを追加するといった具合です。 |
e | 文脈を考慮 | より多くの文脈を提供すればするほど、生成AIはユーザーのユニークな状況に合わせた反応を返します。「睡眠パターンを追跡するアプリをリリースしたばかりだが、従業員の健康を気に掛けている企業にアピールする低コストのマーケティング戦略を探している」といったパターンがありえます。 |
f | 制約条件を追加 | 予算・スケジュール・利用可能なリソースなどの制約条件があれば、前もってプロンプトに記しておきます。「5000ドルの予算で、2週間以内に実行できる新製品のマーケティング戦略は何か」というプロンプトを使えば、「新製品のマーケティング戦略は何か」というプロンプトよりも望ましい回答を得やすいのです。 |
g | 低難易度 | 広範で抽象的な問いかけを小さな単位に分解して問いかければ、実行可能な洞察が得やすくなる傾向があります。「どうすればビジネスを改善できるか」ではやはり漠然としており、「どうすればオンラインセールスを増やせるか」と問いかけること。さらには「お手玉の宣伝に最適なソーシャルメディアプラットフォームは」などの個別具体的な問いかけを行えば成果は出やすいかもしれません。 |
h | 「クリエイティブ・分析的」な問いかけ | よりクリエイティブなブレーンストーミングであっても、分析的なタスクであっても生成AIから応答を引き出すことはできますが、最良の結果を得るには分割してみること。マーケティング戦略について生成AIとブレーンストーミングした後「インフルエンサーマーケティングの長所と短所は何か」といった風に推論を引き出します。 |
i | SWOT分析 | SWOT(強み、弱み、機会、脅威)分析は、ビジネスを望ましい方向に導く際に役立ちます。ビジネスについて、生成AIに具体的にSWOT分析を依頼してみても興味深い結果につながるかもしれません。 |
j | 例示 | 概念を理解するためには、例示することも望ましい結果につながりやすいもの。まず生成AIに例示を依頼したらそれをモデルに使います。こうすれば具体的なケースで何が有効な手法で、何が有効でないかを発見できます。たとえば「成功したインフルエンサーマーケティングキャンペーンの事例を紹介して」と言ったケースがそれに該当します。 |
k | フォーマットの指定 | 回答の形式を指定します。箇条書きや段落分け、リストなど、どのような形式で回答してほしいのかをプロンプトで伝えます。 |
l | 技術用語の定義 | 業界特有の用語や略語がある場合、プロンプトから定義。またはその用語が使われている文脈を生成AIに伝えます。 |
m | 質問の正確な言い換え | 生成AIの回答に満足がいかない場合、問いかけ直します。対話は創造的なアイデアが生まれるだけでなく、思考の方向性にも影響を与えます。 |
n | 詳細か簡潔か | 一段落で要約させたいのか、何ページにもわたる学術的な深堀りがしたいのか。プロンプトに明記します。 |
o | 否定的な指示 | 不要なものもプロンプトに明記します。たとえば「オンライン広告を除くマーケティング戦略を提供する」と言ったもの。 |
p | 複数回答の要求 | トピックをより包括的でニュアンス豊かに理解するためには1つの問いかけに対して複数の回答や視点を求めます。 |
q | 情報源の要求 | ほとんどの生成AIはプロンプトに応じて、リアルタイムでWebをブラウズすることはありませんが、最後の学習に使われたデータの既知の情報源に基づき回答するよう指示できます。 |
r | バイアス除去 | 偏りのない回答の出力、あるいは複数の視点を考慮するべく、プロンプトで明示的に指示できます。 |
s | コンテキスト | 「生成AIの現在のトレンドは」といった問いかけが有効です。特定業界特有のコンプライアンス要件を質問してもよい。「ヘルスケア関連ではどのようなコンプライアンス要件に留意すべきか」と言ったもの。 |
t | 数値 | 可能な限り数値化した情報を与えること。数字やパーセンテージ、距離、速度など必要であればプロンプトに明記します。 |
u | 誘導尋問の回避 | 生成AIの回答を特定のものに誘導するようなプロンプトを与えないようにします。 |
v | 回答のトーン指定 | 学術的な回答が欲しいのか、既成概念にとらわれない内容が必要なのかどうかをプロンプトで伝えます。「グリーンエネルギーキャンペーンのためのクリエイティブで楽しいキャッチフレーズを考えてください」といったもの。 |
w | リアルな意味づけ | なぜその回答が必要なのか、あるいはその回答がどのように使われるのかをプロンプトに明記。「来月、新しいテストアプリを発表する。競合A社に対してどのように位置付けるべきか」といったもの。 |
x | 安全性と正確性の確保 | 生成AIが回答した重要な情報を信頼できる外部の情報源と相互参照します。その回答に基づく決定がビジネスに重大な影響を与える場合は相互参照が必須です。 |
y | 時間をかけた改善 | 生成AIを定期的に使用している場合には、どのようなプロンプトが最も良い結果をもたらしたのかを記録、常にプロンプトを改善しながら活用することが求められます。 |
まとめ
GPT-4のような大規模言語モデルを最大限活用するには、効果的かつ適切なプロンプト作成が必要不可欠。正確で的を絞ったコンテンツを生成させるには「単語・表現・記号・構造」といった要素の最適な組み合わせを選択すべきです。
実生活での対人コミュニケーションと同じで「どのように尋ねたり、問いかけるか」によって受け取る情報の内容が乏しくなったり質が下がったりと望みの回答が得られない可能性も生まれます。逆に同じようなプロンプトでも、基礎となるモデルやそのトレーニングデータ、あるいはリクエストの言い回しの微妙な違いによって、有益な回答が得られる場合も生じます。
大袈裟ですが生成AIに与えるプロンプト次第でビジネス戦略を強化できたり、生活を豊かにできる可能性もあります。ビジネスでは将来的に幅広い意思決定やブレーンストーミングのプロセスで生成AIをツールとして使いたい要望が高まっています。生成AIからの応答とユーザー側の専門知識を組み合わせたベストプラクティスがもたらす波及効果は今後ビジネスに大きな影響を与えることが期待されます。