出社回帰とハイブリッドワーク時代の到来に備える
新型ウィルスへの警戒感が落ち着き、企業・組織の出社への回帰が加速しています。テレワークに慣れた従業員にとり、通勤や出社は苦痛につながりかねません。あるエンジニアの一人は、「出社義務が全社に発表されたその日に辞表を出した」と語りました。
米国ではGoogleやX(旧Twitter)、Amazon.comといった大手も続々と出社を義務化し始めています。従業員は反発しているとも報じられ、テレワークの象徴といえるZoomでさえオフィスから80キロ圏内に住む従業員に週2回以上の出社を義務付けたと報道され話題になりました。
出社を求める理由についてZoom経営側は「製品チームとエンジニアリングチームが同じ部屋にいるというだけで多くの問題が解決された。人間的な側面は依然として価値がある」とコメント。「Zoomだけでは仕事にならない」ことを自ら証明したのです。
「2次元」では伝わらない感覚
「Slack」「Zoom」「Teams」などのツールを用いた仕事は普及しましたが、これらはあくまで画面上に映る2次元。Slackはテキストだけ、ZoomやTeamsは音声や動画つきとは言え、その人の持つ雰囲気や空気感・匂いを伝えることは難しいと言わざる得ません。
こうしたツールは、「仕事内容を伝える」「会議する」と言ったはっきりした目的、時間内に結論を出すことには向いているかもしれませんが、相手の様子や表情を見て状況確認や判断するのに向いていません。
テレワーク全盛時代になり、新人教育やマネジメントが特に難しくなったのは理解できる現象です。対面マネジメントなら、相手の雰囲気や表情を感じながら言葉にできますが、テキスト中心のコミュニケーションは意図以上に冷たくなりがちです。指示や指導を受けるのはただでさえストレスがかかりますが、それが2次元になってしまうとより空気が読みにくくマネジメントする側も、マネジメントされる側もストレスがたまるのは当然のこと。
雑談も少なからず減少しました。
新型ウィルス流行以前は、会議室への移動中での雑談であったり、トイレですれ違いさま、一緒に帰宅する人と電車内で雑談などのいろいろな場面でコミュニケーションをとる機会がありました。たとえば「エレベーターで一緒になり、黙っているのも気まずくて話題を絞り出した」といったこともありました。
雑談は一見無駄なようにも感じますが、仕事とは無関係の話をすることでお互いをよく知り気心が深まれば、仕事でも人間関係を円滑にします。時がたてば余計な話や聞きたくない話を聞かされることもあったように思うのですが、なぜか楽しかった記憶ばかり思い出されます。
今後のハイブリッドワーク時代の課題とは?
そこで登場するのがハイブリッドワーク。
ハイブリッドワークは、従来型のオフィス勤務体制(フル・オフィスワーク)とも、新型ウィルス対策により採用された在宅勤務(フル・リモートワーク)とも明確に異なります。単にオフィスワーカーとリモートワーカーが併存する訳ではなく、「ある日はオフィス、次の日は自宅」といったように、個々の従業員が複数の場所で働けることが前提となるのです。
また、感染対策のような組織や社会からの要請ではなく個人の意思と仕事のしやすさ(生産性)を尊重した働き方でもあることも押さえておくべきポイント。
さらにハイブリッドワークは、リモートワークに慣れていても大きな挑戦・課題となるテーマの一つ。
これまでのように、オフィスや自宅など従業員の環境がある程度限定されていたときと比べ、働く場所はより多様化されコラボレーションを行う環境もオフとオンラインが常に混在することになります。
そのため、真の意味で「いつでも・どこでも働ける環境づくり」の整備が求められるのです。
ハイブリッドワーク推進に求められる環境
ハイブリッドワーク時代に適した職場環境を構築には人事・就業に関わる制度はもとより、テクノロジー環境の整備が不可欠。
それは、フル・オフィスワークやフル・リモートワークでは想定されていなかった「オフィス環境とリモート環境をつなぐ」という新たなテーマが生じるためです。
これは将来的な働き方にハイブリッドワークを採用した組織において先に認識され始めており、そうした働き方に適した環境を整備するうえで取り組まなければならない課題を問うたところ、ハイブリッドワークを想定する組織・企業では、「在宅およびリモート環境の改善」「業務システムへの投資」「コミュニケーション基盤への投資」といったテクノロジーに関わる投資により積極的に取り組む姿勢(下図を参照)を示しています。