次世代ワイヤレス接続技術の登場

従来型Bluetooth接続より広範囲で高品質なオーディオ体験の提供を目的に開発された「XPAN」と呼ばれるワイヤレス通信規格。これは半導体開発大手のQualcomm社が開発したもので「Expanded Personel Area Network:エクスパンデッド・パーソナル・エリア・ネットワーク」の略称です。

今回はこの話題を取り上げます。

特長

新たなワイヤレス接続規格である「XPAN」技術の最大の特長は、Bluetooth接続と低電力のWi-Fi接続を組み合わせていること。ペアリングについてはBluetoothと同様ですが、オーディオストリーミングに切り替わると低電力のWi-Fi接続へと切り替え移行する仕様です。

これにより従来のBluetooth接続では難しかった高ビットレートのロスレスオーディオ(最大192kHz)の伝送が可能とされ、様々な携帯デバイスでハイレゾ(ハイレゾリューションオーディオ)などの「高解像度オーディオ」が気軽に楽しめます。

さらに独自開発した低電力Wi-Fi技術により、バッテリーの消費電力の削減効果が高く、Bluetoothよりも数倍長い伝送距離を誇ることが明らかになっています。

メカニズム

仕組みとしては、たとえばイヤフォンとスマートフォンがBluetoothでペアリングされ、デバイスが自宅のWi-Fiネットワークに接続されていれば、SSIDとパスワードを自動でイヤフォンに共有。音楽を再生しながらスマートフォンから離れたとしても、スマートフォン側はイヤフォンの移動を検知、Wi-Fiへの継続接続の指示を出すのです。

またBluetoothとWi-Fiという異なる二つの接続規格をシームレスに切り替え、最適な接続を維持する制御ソフトがデバイス間の距離、電波状況、オーディオ品質と言ったパラメータを監視、最適なタイミングで接続を切り替えるメカニズム。この技術は対応するQualcomm社のチップセットを搭載したスマートフォンならソフトの追加のみで機能を使えることが分かっています。

展望

この技術、Xiaomi製品では既に採用が始まり、XPAN対応スマートフォン「Xiaomi 15 Ultra」とイヤフォン「Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fi」を発表。じつは日本でもこの製品の販売が始まっています。

これまでBluetooth接続では自宅利用でも遮蔽物や他の電子機器との干渉による音声の断続的な途切れの発生が問題となっていました。また低い音質と高い消費電力も俎上に上がっていました、XPANでは将来的に192kHzの高音質と低い消費電力が実現でき、今後各社のデバイスに採用され普及が進むことも予想されています。ワイヤレスのマウスやキーボードなど短距離伝送では強みがあったBluetoothも近い将来にはXPANに取って代わられるのかもしれません。