AIをローカル実行させる「Copilot+PC」の実像

先月6月にMicrosoftからも発売されたこの新たなPC、特長的なのがAI処理専用NPU(Neural network Processing Unit)を搭載していること。Surface Pro第11世代「5モデル」とSurface Laptop第7世代13.8インチ画面「5モデル」、15インチ画面「4モデル」のラインナップがあります。仕様によりますが最低価格はSurface Pro・Laptop(13.8インチ)が¥207,680 (税込) から、Laptop(15インチ)が¥295,680 (税込)から、カラーバリエーションも豊富です。

同時期にAcer、Dell、HP、Lenovo 、ASUSといったメーカーからも「Copilot+PC」と銘打った製品が続々と登場、PC市場は一気に活況を呈しています。今回新しく登場したPCはこれまでの一般的WindowsPCと比べ、どこがどのように違うのでしょうか?

これまでとの違い

これまでAIを用いたテキストや画像生成には、そのほとんどがクラウド上での処理により行われてきました。そのためPCスペックやネットワーク処理速度に過度に依存、AI処理に時間がかかったり、望んだものを的確に実現させるには手間ひまがかかることが課題となっていました。

そのため生成AIの活用に向け処理スピードの加速化やスムーズさの実現にはAI処理をエッジデバイス(端末機器)側で実行できることが求められるようになった背景があります。そこでAI処理高速化に向け、AI処理に最適な高速NPU、CPU、GPUを乗せたARMベースの「Snapdragon X」等の高スペックのプロセッサの搭載により目指すAI処理回数40TOPS(1秒間に40兆回の操作)の実現が図られたのです。

小規模言語モデル(SLM)

プロセッサは12コア「Snapdragon X Elite」と10コア「Snapdragon X Plus」の二つのバリエーションの高性能SoC(System on Chip)、AI処理の多くはNPUが担います。「ChatGPT」を始めとする生成AIサービスの多くは「GPT-4」などの大規模言語モデル(LLM)を用いていますが、「Copilot+PC」にはその軽量版の小規模言語モデル(SLM)が採用され、ローカルにおけるAI処理の実現にその大役を担っているのです。

そうは言っても全てのAI処理をローカルだけで実行するのは無理があり、大規模言語モデル(LLM)との棲み分けが図られています。

Microsoft以外の「Copilot+PC」モデル

デルの法人向けモデル「Latitude 7455」ではプロセッサは「Snapdragon X Plus」(10コア最大3.4GHz、NPU最大45TOPS)と「Snapdragon X Elite」(12コア最大3.4 GHz、デュアルコアブースト最大 4.0 GHz、45TOPS NPU)から選択可能、ディスプレイ解像度はQHD+(2560x1600)、バッテリーの持続時間は最大22時間。メモリも16GBと32GBから選択可能、搭載ストレージも最大1TBの大容量。価格はオンラインストアではSnapdragon X Plus搭載モデルが35万901円~(税込)、Snapdragon X Elite搭載モデルが37万5607円(税別)~となっています。

ASUSから登場したVivobook S 15はMicrosoft認定「Copilot+ PC」、Qualcomm Hexagon NPU(45TOPS)を内蔵したQualcomm Snapdragon X Eliteプロセッサ、最大75TOPSのパフォーマンスを発揮。作業処理スピード改善や省電力性能の向上などが期待できます。また無線LANの新規格「Wi-Fi 7」に対応、以前のモデルより最大4.8倍も高速になっていると話題です。ディスプレイはアスペクト比16:9の15.6型3K有機EL技術を採用、オンラインストア価格では、メモリ16GBモデルが22万9800円(税込)、32GBモデルが24万9800円(税込)となっています。

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実務への有効活用策は

有効活用事例ですが、製造・小売業では特に需要予測に用いられることが多くなりそう。季節や消費者動向など特に外的要因による需要を予測して製造/供給数を最適化する使い方が一般的となるのではないかと予想します。また、いつどのような商品・サービスがどのような顧客に必要とされるかAIを用いて的確に分析・把握できれば、仕入や従業員の配置をうまく調整でき、損失を少なく、バランスを保った経営のサポートにつながります。

他にも建設・運輸・飲食業などの現場においても様々なリスク要因分析にAIを用いられることも予見できます。たとえば事故などの労働災害防止の観点から発生リスクポイントを事前に予測、危険予知活動や事故予防などのリスクマネジメント・抑制に効果的ではないでしょうか。

飲食店では季節やイベント開催の有無などの外的要因により来客数やメニューの注文数をAIが予測、最適なスタッフ配置や食品ロスの削減に向けた業務効率の改善などにも活用が見込めるのです。