IoT向けWi-Fi通信規格のご紹介

これまで電波干渉や速度遅延・切れやすさといった通信障害が発生しやすかったのが「2.4」や「5」GHz帯の電波。2.4GHz帯はBluetooth接続や電子レンジにも使われており、電波干渉を起こしやすいことが知られています。また5GHz帯の一部は気象レーダー等に優先的に割り当てられ、レーダー信号を検知した場合には周波数を切り替えるDFS機能への対応が義務付けられています。

そんな不便さの解消につながりやすいのが、IEEE802.11ah(Wi-Fi HaLow)や5.2GHz帯の活用。省電力かつ長い伝送距離に強い通信規格であり『IoT』通信向けなど様々な分野に現在も活用されています。

802.11ah規格の特性は

既に国内活用されてきたプラチナバンド「920MHz」帯域を用いることで障害物を回り込み伝搬しやすく、消費電力を抑えて半径約1kmの長距離の通信を実現できるLow Power Wide Area(LPWA)としてその用途が様々に検討されてきました。

そのため新規格開発においてはデファクト規格(Wi-Fiベース)であり、2.4/5GHz帯を用いる従来のWi-Fiと比べると「伝送エリアが広く」、「免許不要で自営設置が可能」、「フルオープンかつ標準規格のIP通信LPWA」、「画像や映像配信に適した数Mbpsのスループット」などの特長を兼ね備えていることが求められていました。

そのため様々なユースケースでの応用、特にIoT分野での活用を目指して社会的課題の解決や利便性向上につながることを望まれています。たとえば農場や牛舎といった広大な敷地における遠隔での監視運用でも活用が見込まれているのです。

活用策

これまでのIoT向け規格は、携帯電話事業者などが提供する「ライセンス」バンド、免許不要の「非ライセンス」バンドが存在していました。
通信速度と伝送距離では802.11ahと近い特性をもつライセンスバンドは以前から業務利用されてきましたが、802.11ah自体は非ライセンスバンド規格であり、利用シーンに合わせ自由に基地局や端末を自由に設置できる自由度がライセンスバンドとは異なります。工場や倉庫など特定の区画によってはライセンスバンドが利用しづらい環境では802.11ahはその有効性が高いと言えます。

伝送距離の長い802.11ahは、以前まで活用できなかったカメラ等の機器を従来型の2.4/5GHz帯Wi-Fiと比べて広い範囲で利用可能。画像・映像等の送受信にも適しており、センサー等で異常を検知した後にも同じネットワーク内で現地の画像や映像を遠隔から確認できます。これらを用いればネットワークの選択肢が増え、ソリューションの導入・活用の幅が広がっていきやすいのです。

IoT向けバンド一覧
ライセンスバンド非ライセンスバンド
LTE Cat-1802.11ah(既存IP資産や市販IPベース機器との親和性が高いIPベース)
LTE Cat-0WiSun(スマートメーター向けなど短い伝送距離における用途)
LTE Cat-MLoRaWAN(伝送距離は長く、独自プロトコル、専用システム向け)
NB-IotBLE
ZigBee
Sigfox(伝送距離は長いが、通信速度が非常に遅いためセンサーなど限定用途向け)

5.2GHz帯の活用策も検討中

ほかにも情報通信審議会の作業部会において検討が開始されている「5.2GHz帯及び6GHz帯無線LAN」の活用策。たとえばドローンや高所クレーン、無線中継などの「上空利用」についても議論が始まっています。
上空利用ニーズの高まりを受けたこの動きですが、将来的に僻地等におけるドローンを用いた輸送や配達、高所作業、高精細映像の送受信などの実現にも影響を与えるものです。

もし認められると重厚長大な橋や道路、ビルなどこれまでは目視による点検を行っていたインフラも上空からの撮影や監視もWi-Fiを用いて可能になります。

しかし国内では5GHz帯無線LANのうち5.2/5.6GHz帯は条件付き屋外使用が認められてはいますが、上空利用はいずれも利用禁止。そのため部会では5GHz帯無線LANと既存無線局との周波数共用の可能性を再整理、上空利用における技術条件を検討している模様なのです。

今回は5.2GHz帯を対象に検討が進められています、なぜなら5.3/5.6GHz帯では、レーダー波を検出した場合に無線LAN側で干渉を回避するDFS(Dynamic Frequency Selection)機能が必須。レーダー波を検出して通信が一時的に断絶すれば「ドローンでの利用に支障が生じる」ためです。

実証事例

実用事例として芦ノ湖ではニジマスやブラウントラウト、ヤマメ、ワカサギなど不法操業を行う人物のカメラ監視システムに802.11ahが用いられています。湖岸に設置したネットワークカメラで監視を実施、違法操業に関わる不審人物や怪しい動きを検知して録画しています。カメラ映像はWi-Fiにより1.1km離れた対岸の拠点に送信される仕組み。

また湖では水温センサーを2箇所に設置、水温計測を随時更新、Wi-Fiを用いた拠点への水温情報の送信も行っています。
これまでホームページでの水温情報提供にも活用、漁協組合長からは「各ポイントにおけるリアルタイム映像と水温等の情報提供にとどまらない事故や災害における映像の記録まで活躍は多岐に渡る、今後予測される慢性的な人材不足という課題にも活用できる」とコメントされています。

免許不要でこれまでの規格より1km以上の遠方へ動画などのファイルを送ることができる802.11ah規格、通常のieee規格におけるWi-Fiでは距離による減衰や遮蔽物で電波は届きません。また屋外設置カメラをソーラーパネルで得られるほどの省電力で稼働させることができるのも大きな魅力です。

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