「6GHz」帯を使えるITインフラ整備には

新規格Wi-Fi「7」では、2.4・5・6GHz帯が同時に使えチャネル数も格段に増えます。チャネル数が増えれば通信速度も接続可能なクライアントデバイス数も相乗的に広がっていくのが大きな特長。やはり旧規格「6E」と「7」の最大のメリットは「新たに6GHz帯を用いた高速かつ安定的通信が利用できること」に尽きます。

しかしながら実際には、新規格での6GHz帯の利用には課題も浮かんできます。たとえば6GHz帯を利用するには前提条件が整っているか?

その前提条件として大きいのが6GHz帯の利用に準拠したデバイス(端末・ネットワーク機器・契約回線)や対応OSであるのは周知の事実。
一例としてWindows11にアップグレードしていない端末の場合、そもそも新規格は使えません。またPCスマホ端末自体も対応するネットワーク通信モジュールを搭載している必要があるのです。

こうした6GHz帯を使える諸条件が整わなければ、新規格「7」にアップグレードする必要性はすぐに見いだせないのが現実。6GHz帯の最大メリットはデバイス同士が密集していても通信の安定性が保たれるとともに、これまでとは格段に高速な通信なのです。

ただし「6E」に関してはそうした制約条件はありません。たとえWindows10であっても6GHz帯を使えます。また対応する通信モジュールを端末が搭載していなくても大丈夫。外付けのusb受信機を挿せば6GHz帯を利用できるのです。

電力消費の削減効果も

たとえば200台程度のPCなどの端末と数台の複合機があるオフィス環境を想定した場合、これだけの規模のデバイスを収容するにあたって、有線LANインフラの整備構築には最低でも7~10台程度のスイッチングハブや数十メートルものLANケーブルなど必要であり、オフィスフロアの工事も大掛かりで1~2か月ほどの長期間になりがちでした。

そこで全PCをデスクトップではなくノートにして新規格のアクセスポイント(AP)に変更することで、アクセスポイント2~3台で全ての端末を収容することができるようになります。残すスイッチングハブの数も1~2台で十分な場合が多いのです。

無線LANインフラは実は有線LAN設備の整備に比べると手間ひまの少なさが特長、スケジュールも短納期で済む場合が多いと言えます。また一般的にスイッチングハブ等のネットワーク製品の消費電力はAPよりかなり大きく、電力消費の抑制効果も見込まれます。

ネットワークサービス品質の観点

オンライン会議や高精細動画など通信遅延やパケットロスと言ったネットワーク品質低下をできるだけ避ける必要があるアプリでは無線LANのQoS(Quality of Service:サービス品質)もまた欠かせない要件。

オンライン会議や4K(4000×2000ピクセル前後の解像度)高細密映像の配信、住宅やオフィスにおけるネットワーク利用シーンでの無線LANのQoS要件は「通信遅延の少なさ」「過剰なパケットロス(損失)の発生」「データ伝送時間のばらつき(ジッタ)の減少程度」「1秒当たりのフレーム数であるフレームレート(fps)」といった指標を用いて測られます。

ビジネスでは特にメールやファイル転送アプリよりもオンライン会議における通信品質が重視されます、そのためアプリごとに適切なQoSを提供できる無線LANを提供できる環境が求められつつあり、そうした観点からも新規格の持つ品質の高さは今後のビジネスに不可欠な要素であるのは確実です。

将来を見据えたインフラ整備の重要性

今後のビジネスにおいて進むハイブリッドワークにおいてはオンライン会議ツールを含め、音声技術やカメラ、ヘッドセットといった周辺機器分野でも機能強化や性能向上への動きを強めつつあります。

遠隔地や自宅からオンラインミーティング等に参加する従業員、オフィスにある会議室でリアルに参加する従業員の両者がともに公平かつスムーズな会議を進行できるインフラ整備を考えるべきタイミングではないでしょうか。

加えて業務におけるAIなど最新技術の活用促進に向け通信ネットワークが貧弱では有効利用につながりません、活発なビジネスの将来像を思い描いてもIT基盤インフラの整備がおろそかでは、「画に描いた餅」。AI処理が可能な高性能ハードウェアへの需要が高まりを見せるなか、通信インフラ整備を怠ることは自分自身の首を絞めかねないのです。

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