インボイス制度の解説
◆目次
正式には「適格請求書等保存方式」と呼称される本制度は企業が納める消費税に適用される仕入税額控除に関わる制度のこと。
簡単にまとめると、今年10 月1日以降は受け取る請求書が一定の条件を満たした「適格請求書(インボイス)」でなければ、企業は仕入税額控除の適用を受けられなくなります。
同制度に対応しなければ支払う税金が増えてしまうことは避けたい。そのために、まずは「いつまでに何をすればいいのか」というタイムラインを押さえることが重要です。
制度開始まで半年を切りましたが、事前に対応しておくべきことを下記に示します。
制度への対応へ向けやるべきこと
請求書を発行する企業は適格請求書を発行できる「適格請求書発行事業者」になるべく税務署に登録を申請する必要があります。
2022 年1月改正施行された電子帳簿保存法(電帳法)も今回のインボイス制度に大きな影響を与えています。
紙ではなく、PDF等の電子データで発行または受領した適格請求書は、原則その『控え』を電帳法の要件に従って保存する必要があるからです(法人税・所得税と異なり、「消費税」については書面での保存が認められる)
法対応のために請求書関連業務のワークフローを見直し、自社に合った運用を定着させるには大きな労力とコストが見込まれます。
本制度の目的は、企業が納めるべき消費税額を正しく把握、適切に「仕入税額控除」の適用を受けられるようにすること。
上記の控除とは企業が、顧客から預かった消費税額から仕入れにかかった消費税額を差し引いて消費税を納めることができる仕組み。
控除の適用を受けるには個々の取引における正確な消費税額の把握が必要ですが、19年10月から実施されている軽減税率制度により、取引内容の科目によって異なる税率が混在しており、正確な消費税額が分かりにくいことが課題でした。
また、年間売上1000万円以下の免税事業者は消費税を納める義務が免除されており、納めるべき消費税が免税事業者の利益になっている問題(益税の発生)も指摘されてきました。
こうした課題を解決、取引の透明性を高め正確な税額を把握することを目的に導入されるのがインボイス制度。
インボイス制度の開始後は、受け取る請求書が取引内容や消費税率、消費税額などの『記載要件』を満たした「適格請求書」でなければ仕入税額控除が受けられません。
適格請求書に必要な記載は6項目、インボイス制度下で新たに追加されるのが税務署へ事前に登録申請した個別の「登録番号」や、「2種の軽減税率」それぞれの消費税額を記載します。
また発行・受領した適格請求書は「控え」を保存する義務が生じます。電帳法に基づき保存には一定の要件を満たす必要があり、その要件は下記の通り
- 「真実性の確保」改ざんされていないデータであると証明できること
- 「可視性の確保」誰でも読めて、項目ごとに索引検索できること
「発行」「受領」による違い
本制度は請求書の「発行」側と「受領」側の双方に関係します。まず「発行側」として必要な対応について詳しく解説します。
発行側企業が対応すべきことの第一歩は、「適格請求書発行事業者」になること。発行側が課税売上 1000万円を超える課税事業者であれば、適格請求書発行事業者に登録します。
課税売上1000万円以下の免税事業者は、そのままでは取引先が仕入税額控除の適用を受けられないため登録申請して適格請求書発行事業者になる(登録後は課税対象事業者)こともできます。
発行事業者としての登録が済めば、発行できる仕組みを整えます。既存の請求書フォーマットの変更が必要になり、税務署から登録番号の交付されたら、上記、必須項目を記載した適格請求書を発行できる体制を構築します。
さらに、発行した適格請求書の控えを電子保存する場合、電帳法の要件を満たした保存が必須に。発行業務に関連する工数が増えることが見込まれるため運用改善が課題です。
受領側で対応が必要になってくることは「適格請求書であるか」の確認作業。適格請求書発行事業者としての登録はあくまでも「任意」となっており「登録番号」の付与がないまま発行される請求書もあります。
また、取引先に免税事業者(年間売上 1000 万円以下の個人事業主など)が含まれる場合は適格請求書が発行されず、適格請求書と非適格請求書が混在することが見込まれ、注意が必要。適格請求書であるかは、国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」で照会、検証が可能です。
適格請求書の確認が取れたら、異なる税率ごとに消費税額を計算。
インボイス制度では税率計算に関して消費税額の端数処理は1インボイスにつき、税率ごとに1回とされます。
また、1 年間の総売り上げではなく、都度の売り上げで発生した消費税の金額を足して算出する「積み上げ計算」方式の採用も可能といった変更点があります。