企業におけるDX化の目的は

ある調査会社は本年10月に国内企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みに関する調査結果を公表しました。同調査は「システム開発・導入」「保守」「運用」各フェーズにおける社内従事者およびサービス委託先選定等に関与したシステム担当者を対象にして本年5月に実施され約400社から有効回答を得ています。

回答が集中した「分野」は

最も多くの回答が集まったのは「既存コスト削減やオペレーション効率化」(79.3%)、「データやITインフラ等の基盤整備」(73.3%)が続きました。

またビジネスの改善にとどまらない「新規事業等の新しい価値提案の創出」を主眼にDXに取り組んでいるとの回答も60%を超え、企業の取り組みが既存ビジネスにとどまらず幅広い分野に広がりつつある実態が見えています。

識者は「既存ビジネスにおける取り組みに加え『新規事業等の新しい価値提案の創出』『新しい顧客ターゲットやチャネルの拡大』が上位に挙がった一因として新型ウィルスによる顧客を取り巻く環境や消費者行動の変化を指摘。テクノロジー活用による新規ビジネス創出や顧客獲得につながる新たなビジネスの仕組みの考案が今後も企業にとって重要なテーマになってくると述べています。

その一方『データやITインフラ等の基盤の整備』に取り組んでいると回答した企業が70%を超えたことも注目すべき事態と語ります。DXへの取り組みが新たなビジネスチャンスに繋がるなか、既存システムの蓄積データ活用だけでなく新規ビジネス立ち上げに伴う新たなデータとの連携機会が増えており、そうしたデータ連携には各部門ごとサイロ化された既存システムとの連携基盤の構築が必要であるのは明白です。

既存の仕組みで実現が難しい場合には、クラウド移行なども含め抜本的データ連携基盤整備も必要となってきます。デジタルトランスフォーメーションを推進している企業にとって次世代に繋がる『データやITインフラ等の基盤の整備』はより一層重要な課題なのです。

基盤整備に求められる要素とは

IT部門がDXの取り組みを主導する分野が多かった要因として「既存や新規ビジネスに関連するデータやITインフラなどの基盤の整備の必要性が増してきた」点が挙げられています。事業部門など非IT部門が主導している割合が高い分野では、ビジネスモデルの変革に主眼が置かれた取り組みであり「事業部門が主導すること自体が自然な流れ」であるとされています。

識者は企業側の論理として「将来的に事業運営の柔軟性や迅速性を高めデジタル能力を補完すべく、クラウド活用やその運営を含めた広範な対応方針が考えられます。そうした役割を担うIT部門は主導する事業部門などへの直接的支援の必要性や支援組織の体制をどのように整備運用していくのか検討を事前に進めておく蓋然性が高い」と語っています。

社外リソースやベンダーの有効活用には

現状のシステム内製化と外製化の状況についても調査結果が出ています。DX関連の「企画」「設計・開発・実装」「運用・管理・保守」の3フェーズについて、各工程の大部分を社内リソースで対応中の企業は全体の20~30%にとどまり、難易度に関係なく社外リソース活用中の企業は60%以上に上っていました。

企画ステップにおいては社外知見や新たなアイデアを取り入れつつデジタルビジネスを進めたい企業の意図が垣間見えますが、クラウドやAI(人工知能)、アナリティクス導入による設計・開発・実装以降のステップでは「社外人材リソース、ITベンダーに頼らざるを得ない側面もある」のが偽らざるところ。

今後は社外リソースを補完的に利用する企業と全面利用する企業に分かれ、社外リソース活用はIT部門の社内における立ち位置や、IT人材不足により左右される企業がほとんどになり、方向性として分野別に内製化されやすいものとそうでないもので分断されやすいのではと予想されています。

こうした社外リソースの活用方法の変化は多くの企業に『既存システム開発や運用などでこれまで付き合いのあったITベンダー』に頼りつつある状況が見えています。取り組んでいる分野によりベンダーの能力を見極め、関係性の見直しもまた進め、多彩なソーシングオプションの活用を検討すべき時です。企業にとってDX化の推進とともに社外リソースの活用やベンダーの管理強化もまた、とても重要な課題となってくるのです。