Wi-Fiスピード実測向上への取り組み
2000年以前では利用可能な無線LANの帯域は2.4GHz帯のみでしたが、01年頃ようやく5GHz帯の一部が認可され「デュアルバンド」化。22年に初めて6GHz帯の一部利用も認可、2.4/5GHz対応の「6」(IEEE 802.11ax)規格に加え、ようやく6GHzにも対応したトリプルバンドとなる「6E」時代を迎えました。
昨年12月には6GHz帯の規制緩和を受けた320MHz幅の通信利用が総務省により認可。「7」の利用も可能になり、高速化はますます進みつつあります。
高速性能の進化
Wi-Fi7(IEEE 802.11be)の公称の最高速度は理論値ですが「46Gbps」、6E(IEEE 802.11ax)の最速値「9.6Gbps」の約4.8倍とその高速化が際立っています。6Eでは、規格上「1」ストリーム当たりの通信速度は2.4GHz帯で286Mbps(40MHz幅)、5/6GHz帯で1200Mbps(160MHz幅)。
前提としてストリーム数はアンテナ数と同じとみなされ、「帯域幅×アンテナ数」でデバイスの最高通信速度を求める計算方式では「6E」ルーターの場合、各帯域にアンテナを4本搭載しているため2.4GHz帯は最大1147Mbps(286Mbps×4)、5/6GHz帯はそれぞれ最大4803Mbps(1200Mbps×4)が理論上の最大速度となっています。
Wi-Fi7の速度向上の要因
Wi-Fiでは「シンボル」単位で通信を行いますが、伝送できる情報量を指す変調方式が「1024QAM」から「4096QAM」へと改善され、シンボル当たりのデータ量は以前の「10」⇒「12」bitへ1.2倍に向上、同じ帯域幅でも速度が1.2倍になり通信の安定性もグンと増しています。この技術は近距離になればなるほど高い効果を発揮、障害物を挟まない位置における双方向ではさらに超高速です。
次に6GHz帯のみ通信可能な帯域幅が160MHzから320MHzに急拡大、同時通信可能なデータ量も2倍に増えています。現状では500MHz分(5925~6425MHz)増え、320MHzは割り当ての3分の2を占めます。
また、以前までの規格ではクライアントに対してサポートされる周波数帯(2.4/5/6)GHzのうち、いずれか一つを選び通信する仕様でした。6GHz帯は新設された周波数帯のため混雑がなく空いており、5GHz帯よりもスピードを出しやすく、複数の周波数帯を束ねて同時通信させる技術を用いて各周波数帯の最高速度の合計が最大通信速度として計算できます。
これらに加え通信の安定化や遅延(レイテンシー)を抑える技術も採用されています。たとえばMRU(Multiple Resorce Unit)は1台のクライアント端末に対して複数の「リソースユニット(RU)」を割り当てられる仕様。無線LANでは各周波数帯を20MHz単位で区切り、それを単体もしくは複数束ねて「チャンネル」を形成、最大320MHz(20MHz×16)のチャンネルを用意。今回、一定の条件のもと1つのクライアント端末に2つのRUを付与、スループットの向上につなげたのです。
他にもスループット改善につなげた技術にパンクチャリング(帯域の穴開け)が挙げられます。40MHz以上のチャンネル形成時に一続きの帯域を束ねますが、一部帯域に電波干渉が生じるケースが発生します。今回、チャンネル内で干渉部分に穴を開けて通信させます。このため干渉電波があっても通信効率を高める効果が高いのです。
電波干渉にも強い6GHz帯
たとえば2.4GHz帯での通信時には、同じ2.4GHz帯を使う「電子レンジ」等との電波同士の干渉が発生して遅延や切断など不安定化しやすい特性があります。
5GHz帯においては、気象レーダーなどのレーダー波を感知した際、電波干渉のないチャンネルに切り替える仕組み(DFS:Dynamic Frequency Selection )があり、無線LAN通信を止めずに切り替えを行う機能自体は備えていますが、製品により無線通信が止まってしまう事態が頻発していました。
6GHz帯では、電子レンジやレーダー波等による干渉の影響を受ける恐れはなく、安定した通信が期待できるのです。
現時点のおすすめモデル
現時点におけるハイエンドモデルは高機能かつコストも高く設定されています、今後は家庭向けを中心にエントリーやローエンドモデルが続々と登場、価格は徐々に下がっていくことでしょう。
ただし、エントリー・ローエンドモデルでは今後進むとみられるハイブリッドワークやAI利用シーンにおいてセキュリティ性や通信速度を担保できない可能性が高く、そうしたことも予見して導入を検討すべきタイミングです。導入に際しては、弊社にぜひご相談ください。
機器メーカー | TP-Link | BUFFALO | IODATA |
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発売日 | 本年2/3月 | 本年2月 | 本年4月 |
製品名 | Archer BE550/BE805 | WXR18000BE10P | WN-7T94XR |
モデル | ハイエンド | ハイエンド | エントリー・ローエンド |
機能 | ・320MHz通信帯域幅通信 ・2.5Gbps対応有線LANポート×4/2.5GbpsWANポート×1(550) ・1Gbps対応有線LANポート×4/10GbpsWANポート×1/10GbpsLANポート×1(805) ・ネットワークセキュリティ ・ペアレンタルコントロール「TP-Link HomeShield」 ・「Wi-Fi EasyMesh」と互換性 | ・320MHz通信帯域幅通信 ・周波数帯域の同時利用MLO(Multi-Link Operation) ・ネット脅威ブロッカー(セキュリティ) ・スマート引越し(設定) ・Wi-Fi EasyMesh(拡張) | ・2.5Gbps対応有線LANポート×3/10GbpsWANポート×1 ・初期設定不要 ・家庭向け |
最大通信速度(6GHz帯) | 11520Mbps(理論値) | 11529Mbps(理論値) | 5765Mbps(理論値) |
Amazon実勢価格(タイムセール等の実施により変動) | 3万/5万円前後 | 約¥65,000 | 約¥28,000 |